2日てんでんこ マイ電力⑤

朝日新聞2017年4月29日3面:人口呼吸器の電源が切れた。複数の電源確保が命に直結する、と思った。 電気工業の大林誠(41)は15日、宮城県名取市に住む小学校時代の同級生、桜井理(さくらいさとる)(41)に、とっておきのプレゼントをした。10ワットの太陽光パネル2枚と360ワット時の蓄電池二つだ。窓際で発電し、人口呼吸器の約10時間分の電気をためておくことができる。「おいサトル。もう危ない目に遭うことは、なくなるよな」
桜井は、6歳の時に筋ジストロフィーと診断され、9歳で車いす生活に。27歳の時にさらに筋肉が衰え、人工呼吸器を24時間手放せなくなった。
震災の日。滞在していた施設からすばやく避難したが、戻った自宅は停電していた。内蔵電池と外部電池を交互に使って呼吸器を動かした。しかし、停電が続いた3日後の14日未明、使い続けた接続機器が故障、内蔵電池もゼロになり、人工呼吸器はストップした。
隣の仙台市内の親戚の家は電気が回復したと聞き、車を飛ばした。この間20分余り。母親が手動ポンプで、空気を送り込んだ。「当初は慌てましたが、手動ポンプはお風呂に入る時には普段から使っていたので、比較的冷静に対応できました」。ただ、複数の電源確保こそが命に直結する、と思い知った。後日、かかりつけの病院スタッフと、人工呼吸器を使う被災地の在宅療養患者にアンケートをしたら、震災後に新たな対策をしていない人が45人のうち21人もいたとわかった。
桜井はいま、複数電源の確保や、周囲の人が日頃から手動ポンプの練習をしておく必要性を、講演で訴えている。16年春にはNPO法人を設立、障害者の就労支援や地域防災への提言などの活動も展開している。大林のプレゼントは、これまでに確保した複数の電源に加え、桜井にとって何より頼りになる電源となった。「太陽光発電が普及すれば、徒歩圏内に電源が増える。それが、私たち災害弱者の安全につながります」
実は、桜井に太陽光発電を教えた大林も、震災後に初めてその仕組みを知った。高圧線の修理などが仕事だが、自分の住む東松島市を支援にきた「つなぬく」に教えられた。勉強を続け、地元の子どもたちに太陽光発電の仕組みを教える講習会を開くまでになった。
「つなぬく」のまいた種は、芽を出し、着実に成長している。(菅沼栄一郎)

朝日新聞ASAの伸光堂西部販売 森林文化協会

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