2日 小さないのち 道に潜む危険【7】

朝日新聞2017年2月26日38面:チャイルドシート嫌がれて 新潟県の保育園児、植木華泰(かなで)ちゃん(当時2)が、チャイルドシート(ジュニアシート)を嫌がりだしたのは2歳になったころからだった。母親(42)の乗用車で出かける時に座るイス型のシート。車のシートベルトで体を固定するタイプだが、つけさせてくれない。母親は「泣き叫ばれるよりはいい」と考え、ベルトをしないことを許してしまうことが多くなった。
あの日も、そうだった。大型連休初日の昨年4月29日、母親は朝から県内の祖父宅に子ども3人を連れて遊びに出かけた。長女の華泰ちゃんはままごとセットをプレゼントしてもらい、終始ご機嫌だった。
帰り道、家まであと5キロ弱だった。カーブを過ぎて直線に入った直後、車が道路の左手に飛び出した。道路わきの溝を突き進み、行く手にあったコンクリートの壁に衝突した。華泰ちゃんは意識不明で病院に運ばれ、亡くなった。
車には3人の子どもが同乗していた。華泰ちゃんは後部座席の左側。その右側でジュニアシートに座っていた長男(5)もこの時はベルトで体を固定しておらず、肩などに軽いけがを負った。エアバッグが作動した助手席には生後9ヵ月だった次女がいあたが、カゴ型のチャイルドシートに体を固定され、無事だった。
母親は取材に「ウトウトして、気づいたらぶつかっていた」と語った。居眠り運転による事故の責任を問われ、執行猶予の付いた禁錮刑を今月言い渡された。母親は育休明けで、事故のあった4月に職場に復帰したばかりだった。夫は仕事が忙しく、育児や家事は母親が中心だった。次女の授乳があり、夜泣きにも悩まされた。上の2人もやんちゃな時期。寝不足で疲れていると感じていた。事故の日は「おじいちゃんと遊んでもらったほうが楽かな」と考えて外出した。
お兄ちゃんといつも歌ったり、踊ったりしていた華泰ちゃん。ピンクの服が大好きで、アイスクリームに目がなかった。あと3週間で、3歳だった。「私の運転でカナを死なせてしまった。運転中に子どもを守るのは大人、そして親の責任。どんなに嫌がっても、ベルトをさせなければいけなかったんです」
未使用時の犠牲26倍 交通事故が減る中で、車に同乗中の子どもの死傷事故の割合は増えている。交通事故総合分析センターの集計によると、2015年の12歳以下の事故のうち、同乗中は52%(1万6933人)。95年は25%(1万4359人)だった。同乗中の事故から子どもを守る決め手がチャイルドシートだ。00年に6歳未満での使用が義務化された。警察庁によると、死傷者のうち死亡の割合は、使わなかった人が使っていた人の26倍。15年に同乗中の事故で死亡した6歳未満の子ども9人のうち、8人が使っていなかった。
ただ、使い方を誤れば効果は落ちる。日本自動車連盟(JAF)と警察庁は昨年、8都道府県で実態調査を実施。車の座席に固定するシートベルトの締め方が緩いなど取り付け方法の誤りが6割あった。また、子どもをシートに座らせる方法の誤りは4割あり、ベルトがクビにかかるなど締め方のミスが目立った。
JAF調査研究課の宮沢俊一さんは「2~3歳はベルトを嫌がる子もいる。一度でもしないと必要ないと思ってしまう」と話す。チャイルドシートにはカゴ型の乳児用と、イス型でジュニアシートと呼ばれる幼児や児童用がある。身長が低い時に車のシートベルトだけをつけていると、衝突時に首が圧迫される危険もある。JAFは年齢にかかわらず、身長140センチぐらいまでの使用を勧める。
日本小児科学会は「年齢を問わず、子どもは後部座席が安全」とした上で、チャイルドシートを助手席でやむを得ず使う場合には、座席を一番後ろまで下げるよう呼びかけている。
助手席では、衝突時の衝撃から身を守るエアバッグにも注意が必要だ。昨年2月に大阪市で起きた事故では、助手席でシートベルトだけをつけていた3歳の女の子がエアバッグに圧迫されて死亡した。後部座席にチャイルドシートがあったが、使っていなかった。(津田六平)

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