18日 問う「共謀罪」

朝日新聞2017年6月15日34面:朝日新聞は「問う『共謀罪』」として、弁護士や作家、ジャーナリスト、学者ら、20人以上に法案についてインタビューした。成立に向けて与党が突き進む国会を、どう見ているのか。
ジャーナリスト 田原総一郎さん(83)加計問題に「ふた」 とんでもない話だ。「共謀罪」をめぐる国会審議は、日がたつにつれ、不信感がどんどん増していった。一般人は捜査の対象になるのか。そもそも創設の目的は何なのか。政府の答弁は二転三転した印象で、これでは国民の理解は深まらない。
なぜ、採決を強行しようとするのか。政府は加計学園の獣医学部新設問題に対し、国民の厳しい視線が寄せられ始めたのを感じたのだろう。近く告示される都議選への影響を懸念し、これ以上深堀りされないよう、国会にふたをした、ということではないか。
審議で気になったのが、野党の追及の矛先が法相の発言ぶりに集中し、法案の危険性をあぶり出す本質的なやりとりに欠けたことだ。法相の人選から、今日までの経緯までがすべて安倍首相の考えたシナリオ通りだとしたら、残念でならない。


弁護士 亀石倫子さん(42)プライバシー危機 法案を通せば監視社会になるという声があり、テロ対策に関係ない罪名も入っているという指摘があった。国連の特別報告者まで懸念を示した。政府の説明は不十分だという世論が多いなかで、踏むべき手続きをすらすっ飛ばすなんて、本当に民主国家なのかと疑いたくなる。
こんな状況でも採決できるのは、「監視の対象は犯罪者だけ」「自分たちは関係ない」という国民も多くいたからだろう。GPS操作の違法性を問う裁判をした経験を踏まえれば、法案によって社会は操作という監視の網で覆われ、プライバシーは危機に陥る。監視の対象にならないように国民が「気をつけて」しまう、政府が理想とする「やりやすい」社会に近づいている。私はそんな社会に暮らしたくない。愛する自由な社会のために、自分の頭で考え、声に出し、動くことをやめない。


ジャーナリスト 青木理さん(50)尋常じゃない進め方 277もの犯罪を計画段階から取り締まる「共謀罪」は、日本の刑事司法の転換点になる。これだけ重要な法案なのに、法務委員会の議論を打ち切るという異例の手続きで成立させるのは信じがたい。  森友問題、加計問題と、最近の政権の物事の進め方はちょっと尋常じゃない。あるものを「無い」と言ったり、都合の悪い書類を「怪文章」扱いしたり、国会で改憲案について問われると「読売新聞を熟読して」と言ったり。異論や反論、疑問を数の力で押し切るやり方が目に余るが、今回はその究極形だ。  歯止めがあいまいな「共謀罪」は警察の強力な武器になる。これで終わらず、通信傍受などの捜査手法の拡大が必ず待っている。市民社会やメディアは権力が暴走した時の怖さに鈍くなっている。表現の自由やプライバシーが危機にさらさらされる警戒感を持ち続けなければいけない。


宇宙物理学者 池内了さん(72)国会死にかけている 国会審議の質の悪いことだけが印象に残った。答弁が安定しない法務大臣に説明をさせずに、刑事局長にばかり答弁させた。まともな議論が積み重なることがなく、ただ時間だけが浪費された。意味のある議論がないまま成立するなら、国会は死にかけていると言っていい。  賛成した議員は法案成立後の世界を想像しているのだろうか。自由を制限するこの法律で密告社会に近づいていく。気づいたときに後悔しても遅い。「戦前と今の世の中とは違う」という人は想像力が足りないのではないか。加計学園をめぐる文章の問題をみていても、日本は事実を軽視する「ポスト・トゥルース」の国になったと思う。この法律ができても、すぐに世の中が変わることはないだろう。ただ、政治家もやがて交代していく。今の政治家が「大丈夫」と言っても信用はできない。


評論家 萩上チキさん(35)中身詰めきれず 成立ありきで、法律の中身が詰められなかった印象だ。野党の質問に対する答弁も積み残しのままだ。  これまで犯罪を罰するのは「既逐」が原則だった。重大犯罪には例外的に予備罪などがあるが、その前の計画や準備行為の段階で処罰するのは、刑事司法の形を大きく変えることになる。300近くの罪を対象とするのに、十分審議されたとは言えない。  金田勝年法相は国際組織犯罪防止条約(TOC条約)に加盟するために法律が必要だと説明した。条約加盟は賛成だが、この条約は「テロ対策」ではない。「テロ等準備罪」という通称もミスリードだ。立法プロセスが軽視されていることも問題だ。「与党が成立させると決めたのだから通す」なら議会の意味がない。「安倍一強」だからこそ、与党には多様な意見と向き合う姿勢が求められる。


作家 落合恵子さん(72)数の力による暴挙 数の力による暴挙でしかない。政府は「丁寧に説明する」と言いながら、責任を果たしていない。「中間報告」でいきなり採決を図ろうとするのは国民をないがしろにしたやり方だ。  国会を延長すれば、森友学園や加計学園の問題でも追及が続く。できるだけ早く採決に持ち込みたいと考えたのだろう。民主主義が崖っぷちに立たされたこの状況を、与党議員も受け止めるべきだ。十数年前、共謀罪法案が議論されたときも反対した。今まさに成立しようとしているのに、反対の声が伝わりにくくなっている。「自分には関係ない」と思っている人が多い。だから、政権も採決を強行できるのだろう。  特定秘密保護法、安全保障法制なども数の力によって成立した。では、誰がその力を与えたのか。私たちはその問いに、向きあっていかなければならない。

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