17日てんでんこ 皇室と震災【15】

朝日新聞2017年6月13日3面:声をかけられ、「つらい思いや苦労が一瞬で飛んだ気がしたね」。「私の町では漁業、水産関連施設が全滅状態でした。仲間も亡くしました」2016年9月、岩手県大槌町の新おおつち漁業協同組合地方卸売市場で、「ど真ん中・おおつち協同組合」理事長の芳賀政和さん(72)は天皇、皇后両陛下にこう話した。震災後、仲間の水産加工4業者で団体を立ち上げ、全壊した魚市場の跡地でサンマの宅配や新巻き鮭づくりに励んだ。現在は通販を軸に水産加工品を販売する。震災直後は何もする気が起きなかったが、若い漁師が魚具を拾い集め、水揚げをする姿を見て「我々が頑張らないとダメだ」「水産業の復興なくして大槌の復興はなし得ない」と奮起した。
団体の取り組みを話すと、天皇陛下から「試みがよい成果をあげて本当に良かったですね」と声をかけられた。海で働くのは怖いと廃業する漁師がいたり、魚が思いように取れなかったり苦労したが、「震災後の活動が認められた」と芳賀さんは思った。「つらい思いや苦労が一瞬で飛んだ気がしたね」
両陛下はその後、町役場を訪れた。すぐに中に入らず、出迎えた被災者らに歩み寄り「よく耐えられました」とどと声をかけた。侍従が「そろそろお時間でございます」と話しかけても、端の人まで声をかけ続けた。近くでも守った平野公三町長(60)は、両陛下から手を振られた町民が笑顔になるのを見て「(両陛下)力は大きい」と思った。
両陛下は1997年にも、全国豊かな海づくり大会で大槌町を訪れている。震災前の風景を知っている両陛下は熱心に当時の話や質問をし、町長からの被災状況の説明は予定の倍の約20分に及んだ。町長は「復興が風化すると言われる中、両陛下が来られたことでもう一度思い出してもらえたのでは」と話す。
両陛下はともに80歳を超えている。間近で接した新おおつち漁協代表理事組合長の平野栄紀さん(68)は、皇后さまが陛下の腕に手を添えたり支えあったりしていることを初めて知った。高齢の体への負担を顧みず、足を運んできれたのだと感じた。「来ていただくだけで元気になる。それこそがまさに、象徴天皇なのだと思います」
(多田晃子)

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