17日 私の東京物語 中尾彬

東京新聞2017年4月14日28面:フランスに行かせてくれ 教室での美術史の講座に飽きると、新宿の映画館から渋谷の映画館へと、絵を描く時間よりもスクリーンとにらめっこしていた時の方が長かった。映画の主役は確かにかっこいい。でも脇役の俳優は個性的で、どんな陳腐な役でもきちんと人間を演じている、それが魅力的だった。つまり、絵の基本であるデッサンのように役をつかむデッサンがしっかりしているのだろう。そんなことを鑑賞後に自分なりの”映画ノート”に書いたりした。そのノートが増えれば増えるほど、俳優になる気がどんどん頭を持ち上げてきた。
そんな時、新聞に日活映画会社「第5期ニューフェイス」募集の記事が載った。これだ! 俺が待っていたのはこれなんだ! と。そして親をなんと説得しようか、学校はどうしようかと、まだ応募もしていないのに興奮した。全国からの応募者数が4千名、書類選考、面接、カメラテスト、と絞り込まれ、最後に残った合格者は14名、その中には私が・・。そして同期には後にスターとなる高橋英樹もいた。
両親に報告すると、明日にでもスターになると思ったのだろう、そうか、そうかとただうなずいていた。
とにかく学校に退学届を出し、親にもう一つわがままを云った。絵は断念するからピカソやマチスの世界を観たいと、つまり、フランスに行かせてくれと。(俳優)

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