15日てんでんこ 熊本地震1年3

朝日新聞2017年4月13日3面:「地面は割れたけど、人はつながった」 「地獄3兄弟」の真ん中、河津謙二(53)は実務派だ。熊本県南阿蘇村観光協会会長も務める。謙二は再建費用を補助金に求めた。地獄温泉はリーマン・ショック後、客が減り、億単位で借金を抱えた。村内の老舗旅館が廃業していく中、部屋数を絞って料理や部屋などの付加価値を高め経営が改善。外国人客も増え、あと5年で借金が完済できそうだった。そんな計画も地震と豪雨が押し流した。再建には十数億円必要だ。
東日本大震災で、中小の事業所が取り組んで計画を立てると再建費用の最大75%を国や県が負担する「グループ補助金」制度が導入された。1万1千を超す業者に約5千億円が補助されている。熊本地震でも適用されると知った謙二は観光協会の会員を誘った。すると土産物などの出入り業者からも頼まれ、7月22日の第1次申請時には68事業者が参加した。
ただ、手続きは煩雑だ。東日本大震災でも、比較的規模が大きく書類作成に慣れた会社が先に認められ、まちの商店主らが取り残されることがあった。南阿蘇村では村商工会職員と監査法人「トーマツ」が無償で指導した。商工会の調査に100を超す業者が「被災して廃業しかない」と答えた。危機感を抱いた8人の職員が連日パソコンに向かい、トーマツの公認会計士がチェックした。コピー機のカウンターは1ヵ月で17万枚に達した。
その後病院や理髪店なども加わり100業者に。申請額は50億円を超した。申請者は毎月会合を持つ「美しい自然が年間600万人を呼ぶのに甘え、個々で商売ができていたが先細りだった。これからは連携しなければ」と謙二。異業種の若者が議論する場もできた。謙二の弟・進(51)は、熊本市の学習塾「熊本ゼミナール」が村に持つ自然体験施設の寮に妻子と身を寄せた。寮は親と離れても友達と同じ中学で卒業したいという被災生徒のために3月まで提供され、進が管理人をした。
旅館休業中は収入がない。料理人の進は、旅館で出していたゆず料理などを寮の台所で作って通信販売を始めた。「続けて使わせてほしい」と塾代表の組脇泰光(くみわきやすみつ)(60)に頼んだ。地震前は面識もなかったが、ただ同然の家賃で貸してくれた。「再建したら招待してくだいね」とだけ条件をつけて。進は思う。「地面は割れたけど、人はつながった」 (東野真和)

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