15日 第99回全国高校野球選手権大会 観戦記

朝日新聞2017年8月13日14面:タレント西川きよしさん 何人くらいいるんですか? 4万6千。すごい視界です。これは素晴らしい舞台です。71歳にして初めての甲子園球場です。始球式をしたことありますが、野球を生観戦するのも初めてです。おお、でかい。一回、日本文理の川村君が打った。人生で初めて見たホームランです。75歳の大井監督は同世代。お元気ですね。この大会を最後に引退されるんですか。あれ、今度は笠原君がホームラン。監督さんの花道を飾ろうと、心を一つに序盤から飛ばしています。
僕には高校時代がないんです。家が貧しかった上、父が病気になり、中学卒業の翌日から自動車修理工場で働いた。そこで大やけどを負って入院した時に、立ち止まって人生について考えることが出来た。そして、お笑いの世界へ進もうと決めたんです。コンビを組んだ横山やすしさんも僕も野球は素人。ボーグと言えば、豚肉? そんなレベルです。夏になると、劇場の楽屋で他の芸人たちが高校野球のテレビ中継を見て、大騒ぎしている。素人の我々にはよく分からないけど、全国の人たちはこれだけ熱く盛り上がっている。よし、これをネタにしようと「ああ!高校野球」という漫才を作りました。盗塁といえば、ベースを抱えて走る。そんなネタがよく受けました。
鳴門渦潮が反撃開始。鳴門の渦が巻いてきました。日本で一番おいしい魚をご存知じですか? そう、鳴門のタイです。十代に頃の下積みはしんどかったけど、振り返ればいい修行になった。コンビの頃もネタは500本くらいつくった。意見が食い違い、つかみ合いのケンカをしたこともある。我々の世界は華やかに見えるかもしれませんが、陰で努力を重ねないと人様を喜ばせることは出来ません。
こうして初めて高校野球を観戦していても、やっぱり「小さなことからコツコツと」が大事なんだと思うんです。努力を重ねたからこそ、彼らはいまこの素晴らしい球場でプレーが出来ている。たとえ甲子園には出られなくても、これまでの努力は社会に出て必ず生きます。
八回、2点を追加され鳴門渦潮は厳しくなった。負けるかもしれないと思っても、最後まで一生懸命です。心が洗われます。高校野球は、見る人の心の洗浄器だとも思うのです。だから、5万にも近い人がここにいるんでしょう。勝利監督インタビュー。大井監督はうれしそうです。花道は続きます。素晴らしい一日になりました。ええもん見させて頂きました。(構成・竹田竜世)

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