14日 無理と思ったら、きっぱりと 上

朝日新聞2017年2月11日Be9面:105歳の私の証 あるがまま行く 日野原重明 高い志を持った若者が働き過ぎで身体のバランスを崩し、命さえも失ってしまうなど、働き過ぎをめぐる報道が相次いでいると、本欄の編集者が先日、話してくれました。私は高度経済成長期、医師として多くの「企業戦士」たちと接してきました。現代は、携帯電話やメールの登場で職場を取り巻く環境も変化していますし、女性が男性と同じように責任ある仕事を任されるようになりました。ただ、大勢の人間が関わり合って働く職場には「今も昔も変わらないこと」があるようにも思えます。
たとえば、これは中高年にも同様に言えることですが、お酒があまり強くない若者が、職場の上司や取引先などから、酒宴への出席を勧められることがあります。私はお酒にアレルギーがあり、その上、メソジスト派の牧師の父の影響もあって、お酒は口にしません。「せめて一口でも」などと強く勧められた場合、私はいつも、こうお答えします。「私はこのパーティーで、お酒ではなく、おしゃべりでウキウキ楽しい気持ちになろうと思っています」。知らない人、久々にお会いする人、世代や出身地の違う人。彼らとおしゃべりするだけで、頭の中が、非日常的な楽しさで華やぐからです。
あるいは「会費は3千円、もとをとらなければ」などと考える方もいらっしゃるでしょう。ですが、二日酔いや胃もたれなどで、結局は体を壊す恐れもあります。むしろ「おしゃべりの場を用意してもらった必要経費」と考え、会場を歩き回った方が、ずっと生産的に思えます。
実のことろ、私も若い頃に、どうしても断れず、お酒を飲んだことがあるのですが、ひどく気持ちが悪くなり、トイレで吐いてしまったのです。苦しい思いをしながら「ああ、ぼくは本当にお酒がダメなんだ。体が受け付けないんだ」と、身をもって知りました。でも日本人の間には、飲めない人、断る人は、付き合いの悪い人、社交性に乏しい人、と見る傾向があります。若い世代に気兼ねして誘いを断りきれずお酒を飲んで、知らぬ間に体や心にストレスを負ってしまう。そのことが心配です。
「アルコール、ダメなんです」「ごめんなさい、予定があって」など、サラッと伝えられるかどうか。これは仕事でも同じではないでしょうか。
(聖路加国際病院名誉院長)

 

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