14日 問う「共謀罪」施行に思う 

朝日新聞2017年7月10日30面:元裁判官 水野智幸さん(55)裁判官は警察に問いただす勇気を 何が処罰されるのかが不透明。疑問はいっさい解消されていません。 政府は、適用対象は「組織的犯罪集団」であり限定をかけたと言いますが、一般人が含まれるかどうかをめぐり、国会での説明は二転三転しました。犯罪の構成要件でる「準備行為」も、「花見化か下見かをどう区別するのか」と議論になりましたが、日常の行為との区別は難しい。ひとえに捜査当局が怪しいと見なすかどうか、そのさじ加減にかかっていて、恣意的な運用が懸念されています。
また、犯罪の実行行為がおきて捜査が始まるという原則が、根本から変わりすます。事前の任意捜査の範囲が際限なく広がります。今でさえ、警察が、犯罪の疑いのある人物の自動車にGPS端末を勝手に装着して行動を監視したこと明るみに出ました。証拠を集めるために、盗撮や盗聴、メールの傍受、尾行など日常的な監視は不可欠なのです。警察は「共謀罪」という大きな、危うい武器を手にしたわけです。警察内部でチェックが働く仕組み作りがより重要になっていきます。監視の方法や捜査対象の選定が恣意的にならないような、内部基準を作っくていただきたいと考えています。
裁判官も重大な責任を背負うことになりました。警察から令状請求があった段階で、厳しい目で審査することが求められます。少しでも疑問があれば、警察に問いただす勇気と矜恃が求められます。
準抗告(不服申し立て)での裁判官の役割も重要です。逮捕された容疑者の拘留について、弁護側が申し立て準抗告を形式的に退けるのではなく、容疑者の抱える事情に丁寧に耳を傾けるのです。威力業務妨害罪などに問われた沖縄県の基地反対派リーダーについて、裁判所は準抗告を繰り返し却下し、約5ヵ月の長期拘留を認めることになりました。こうした姿勢は改めるべきです。犯罪の対象などを厳格化し、乱用を防ぐ基準をいかに構築するか。これからの実務家や研究者の英知が問われます。(聞き手 編集委員・豊秀一)

 

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