13日てんでんこ 皇室と震災【14】

朝日新聞2017年6月9日3面:3世代にわたって継承された、両陛下の被災地への思い。 「数百匹…。すいぶん減ったんですね」2016年9月、岩手県の大槌役場。水槽を泳ぐトゲウオ科の「イトヨ」を見ながら天皇陛下がつぶやいた。
町を流れる大槌川支流の原水川に生息する淡水型イトヨは、街の天然記念物に指定されている。湧水が豊富な原水川には5千匹ほどが生息しているとされるが、震災で数百匹程度に減ったとみられる。大槌町教育委員会の越田実紀子さん(38)が説明をはじめると、陛下の質問が始まった。魚類学者である陛下の質問は「専門的で、繁殖期の体色の変化もご存じだった」という。説明後には「大切にしてください」と声をかけられたそうだ。
秋篠宮さまもイトヨの保全活動で大槌町と交流がある。 1999年11月。街で開かれた研究会に参加した秋篠宮さまは、イトヨについて「生物多様性に配慮した保全を期待する」と話した。2002年11月のシンポジウムでは「押しつけではなく、イトヨならイトヨに興味を持ち住んでいる地域を理解し、大事な環境を保全していただきたい」と訴えた。
震災の年の4月上旬、東京で開かれた会合の会場。秋篠宮さまは紀子さまと、イトヨを通じて交流のあった大槌町職員(当時)の佐々木健さん(60)に歩み寄り声をかけた。「ご迷惑のかからない時期に大槌町にお見舞いを申し上げたいと考えている」
翌5月、お二人の大槌、山田両町の避難所訪問が実現した。二手に分かれて床にひざをつき、予定時間を超えて一人ひとりに声をかける様子を見た佐々木さんは「両陛下のスタイルを継承している」と胸が熱くなった。佐々木さんの求めで、秋篠宮さまは佐々木さんの自家用車のドアに「希望11・5・26」と記した。帰り際には原水川にも足を延ばした。
その後も交流は続く。14年6月には長女眞子さまと訪れ、大槌漁港で復興状況を視察。湧水を飲み、参加したシンポジウムでイトヨについて「湧水の一つのメルクマーク(指標)として大事な魚」と語った。眞子さまと次女佳子さまは、県内でボランティア活動にも参加している。両陛下の被災地への思いは、3世代にわたって継承されている。佐々木さんは言う。「イトヨは被災地と皇室を結ぶ絆。津波で失ったものは大きいが、新たな希望を見いだせた」(多田晃子)

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