20歳の試練【3】

朝日新聞3月17日30面:20歳で精巣がんと診断され、手術を受けた愛知県扶桑町の病院職員広田圭(33)さんは、就職活動を始めたが、面接で病気のことを伝えるべきかどうか悩んでいた。 治療を終えて体調は回復し、手術の傷痕でも見られない限り、誰も気付かれない。一方、「がんになったことは、自分を語る上で欠かせない要素だ」とも思った。 エントリーシートの「学生生活で得たもの」という欄には、闘病経験に加えて。「当たり前だと思っていたものの大切さに気付いた」と書き込んだ。ところが、書類選考で落ちたのをきっかけに、心に迷いが生じた。 今の社会には「がん患者は働けない」という先入観があるのではないか。以来、がんの経験を積極的に伝えるのはやめた。「大事なことを隠している」との後ろめたさを感じていた。
三重県内の団体職員の採用選考が順調に進んだ。最終面接で、ふいに聞かれた。「君、大きな病気をしたことはないよね?」一瞬考えて「大丈夫です」と答えた。後日採用通知をもらった。「やっと社会に出られる」。後ろめたさは残ったが、うれしかった。闘病中は「何の役にも立たない」と思えた自分が、ほかの人と同じように働ける。早く一人前になろう、と必死に仕事を覚えた。 だが、働き出した2008年冬、休みを取って受けた定期健診で引っかかり、再検査が必要になった。仕方なく「使事都合」という理由で、計4日間休んだ。 結果は異状なし。ほっとした。 「休んだ分を取り戻そう」と出勤した矢先、上司に呼び出された。「転職活動をしているのか」「違います」と、あいまいに否定することしかできなかった。面接で病気について伝えなかったのを、責められるのが怖かった。これまでの仕事への意欲まで誤解されたようで、ショックだった。
一人の先輩に事情を説明した。「胸の内に留めておくから、何かあったら相談して」と言われた。職場に一人でも理解者がいるということが、救いだった。 同じころ、がん患者が交代で夜通し歩く「リレー・フォー・ライフ」というイベントに参加した。初めて、同じ世代の精巣がん患者5人と出会った。

 

朝日新聞ASAの伸光堂西部販売 森林文化協会

ご予約・お問い合わせはお気軽に

Tel0120-740-276

〒352-0011 埼玉県新座市野火止8-14-29

ページトップへ戻る