12月6日 パラダイス文書

朝日新聞2017年11月30日11面:第1部影の案内人⑤ 税逃れ、GDPを押し上げた 米アップルが新たなタックスヘイブン(租税回避地)を探していた2015年。アイルランドでは、国内総生産(GDP)が奇妙な急成長を見せていた。前年比26.3%増。同国の中央統計局は「前代未聞だ」と異例の発表をした。同国は、ユーロ圏の財政が厳しい国として、「PIIGS」と侮辱された国の一つ。10年には金融支援を受けた。GDPはマイナスから復調したが、13年は1.1%、14年が8.5%。その後に資源が見つかったわけでも、大企業が移転してきたわけでもない。
何が起きたのか。ノーベル経済学賞を受賞したポール・クルーグマン教授は、この不思議な現象を、国の伝承をもじって「妖精エコノミクス」と呼んだ。
統計を見ると、謎が解けてくる。この年に国の知的財産(特許や商標など)が突如、2500億ユーロ(36兆円)増え、これがGDPを押し上げていた。背景にはアップルの関与が浮かぶ。14年秋、アップルの税逃れ疑惑への批判が高まったことを受け、アイルランド政府は税逃れへの規制強化を発表した。この国に最大の海外拠点を置いてきたアップルは対応に追われていた。
ただ、抜け穴が一つあった。企業が知的財産を購入した場合、その経費は「損金」として扱われ、のちの利益と相殺できる仕組みがあった。アップルはこれに目をつけたとみられる。複数の法律専門家の推定はこうだ。アップルは社内取引で、2千億ドル(23兆円)以上の特許などをアイルランドの子会社に購入させた可能性が高い。巨額赤字を抱える形になった子会社に、海外で生み出した利益の多くを移転。利益は相殺され、支払う税金が大幅に抑えられたとみれる。
アップルは11月6日付けの声明で、アイルランドの税法改正に合わせた「法人構造の変更」を認めた。だが税逃れの疑惑は否定した。毎年2400億ドル(28兆円)の税収が、多国籍企業などの税逃れによって失われているー。15年に経済協力開発機構(OECD)が発表した数字だ。公平な税負担を求める側と、逃げる側と。いたちごっこは果てしなく続く。

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