12月25日てんでんこ 奥尻から【8】

朝日新聞2017年12月21日3面:イカ、ウニ、アワビ・・。「夢の島」と言われた豊かな魚場は、細り続ける。 北海道の南西部、日本海に浮かぶ奥尻島の周辺海域はかつて、ホッケやイカなどの回遊魚が集まる豊かな魚場があった。「夢の島」とも称された離島を目指し、他県からも多くの魚船がやってきた。
水産業に支えられ発展してきた奥尻町で、島の南端にある青苗魚港は拠点だった。1980年公開の映画「男はつらいよ」には、北海道南西沖地震の津波にのまれる前の青苗地区のにぎやかな町並みが映っている。だが、活気あふれた面影はいまはない。町の水産業は93年の地震前から下降傾向にあった。海水温の上昇や海流の変化などを指し、漁師たちは「海が変わった」と口をそろえる。200カイリ規制で魚場が狭められた影響も大きい。そこに地震が拍車をかけた。
地震前に6千トンを超えていた総水揚げ量は昨年、7分の1まで減った。北海道全体も半減という厳しさだが、奥尻は主力のイカやホッケに加え、アワビやウニもふるわない。水産業の復活を目指し、町は地震後の復旧事業で漁師を手厚く支援した。被災した漁船の新造はもちろん、被災を免れた船にも補助金を出した。「育てる漁業」にも力を入れる。その象徴が、地震から6年後に整備した最新鋭の「あわび種苗育成センター」だ。
親アワビを育てて採卵し、温泉水で稚貝を2年半ほどかけて40~50ミリまで大きくし、放流用や養殖用に売る。資源回復のため、地震翌年から3年間、アワビを禁漁にもした。奥尻はかつて、良質な昆布を食べて育つ天然エゾアワビの宝庫だった。「種アワビ生産日本一」を誇り、全国に出荷した。「まさに、『アワビの島・奥尻読もう一度』と夢見たんです」。町水産課長だった元町長の和田良司(71)は振り返る。
だが、復活の道はけわしい。「津波で海底が荒れ、何より買い手の漁師が減ったため」と町は説明する。地震前年に409人いた漁師は昨年152人に。種アワビの販売個数もピーク時の31万超から激減している。8年前にイカ釣り漁船を手放した佐々木孝(78)は今年、天然アワビを1個も取れなかった。60年の漁師人生で初めてのことだ。地震で犠牲になった仲間の分もと頑張ってきたが、息子に後を継げとは言えなかった。地震後、新造船で海原を駆けた。そのときの高揚感がいまは懐かしいという。(阿部浩明)

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