12月15日 オトナになった女子たちへ 益田ミリ

朝日新聞2019年12月13日29面:お財布の日 「お客さま、今日はお財布を新調するのにすごくいい日なんですよ!」と、お店で財布を見ていたら若い女性店員に言われた。「そんな日があるの?」思わず聞き返す。「1年に数回しかないんですけど、お客さま、今日がその日です」 天赦日という吉日だそうで、財布を新しくするのにもよいらしい。さらに彼女は言った。「お客さま、今なら時間もぴったりです」「時間?」「夕方の5時から11時の時間帯がいいです」「ほんとに~」 笑いながらも、わたしはこの店の財布が前々から欲しかったので、買う心づもりで見ていたのである。大安吉日にはこだわらない質だが、彼女があんまり嬉しそうに教えてくれるので、だんだん愉快になってきた。「そうか、じゃあ、わたし買うよ!」元気よく財布選び。どの色にしようかなぁと黒い財布を手にする。彼女は言う。「ぜひ、鏡で合わせてみてください」えっ、財布って合うかとかあるの? 言われるまま財布を手に鏡の前に立ってみた。「どうですか?」と聞くと、「うーん、お客さまにはこちらの色のほうがお似合いかもしれません」彼女が持ってきてくれたのは、なんと銀色だった。ピカピカと光っている。そうか、私は銀色の財布が似合うオトナなのか。その財布を持って再び鏡の前に立つと、「お似合いです!」と彼女が言うので、もうこれに決定する。最近、いらぬ自己主張をするのをやめようと思っていたところなので、人に決めてもらったものでかまわなかった。「お会計お願いします」支払いをしていたら、若い男性店員がわたし言った。「お客さま、今日は財布を新調するのにすごくいい日なんですよ!」うん、知っている。みんな、教えてくれてありがとう。早速、その場で銀色の財布にお金を入れ替え帰宅した。(イラストレーター)

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