12月15日 タダやっぱり魅力的?

朝日新聞2017年12月9日17面:北川正恭(きたがわまさやす)さん元三重県知事 負担と分配示さず刹那的 政治の歴史は、無償化と無縁ではありません。1973年には、老人医療費が無料になりました。高度経済成長のころは、果実の分配が政治の仕事でした。長生きする時代に、老後の医療は切実な問題になっていましたから、対応しなければ選挙で落選します。だから、政治が無料にしたんです。
2009年に政権交代した民主党が衆院選で掲げた目玉政策は、高速道路の無料化でした。ただ、党内議論が不足していた。実現できず、まもなく政権から陥落しました。今回決まった幼児教育の無償化はどうでしょうか。私は賛成です。親の所得格差が教育の格差につながっており、子どもを社会全体で育てるというミッションが大人にはあります。そういう哲学を示す必要があるからです。
ただ、プロセスには問題があります。日本には1千兆円もの借金があるのに、財政を立て直せますか。所得制限を設けなくてよいですか。単に、民進党の代表だった前原誠司氏の主張をパクって、総選挙の公約に掲げたかったのではないですか。与党内で議論したでしょうか? タダより高いものはない。
未来への責任が希薄です。私が三重県知事を辞めた03年に、マニフェスト(政権公約)を提唱したのは、経済が成熟して「あれもこれも」の時代が終わり、「あれかこれか」を示す道具が必要だと思ったからです。優先順位をつけ、苦い薬も出す。本当に実現したか、財源に見合った効果があったか、のちの検証することができ、政治家の説明責任にもかないます。
しかし、私もマニフェストで期限や数値目標を掲げることを強調しすぎました。本来は、党内での徹底した議論が必要なのです。制作を磨き、党内を結束させていきます。日本の未熟な政党政治では、まだ根付いていません。民主主義の政治とは、現実への対応です。どんなに良い政策でも、国民がついてきてくれなければ実現しません。だから政治家には時代の最大値、まさに潮流を読む力が求められます。
その結果、政策はポピュリズムを体現したものになります。政治の業とは言え、相変わらず刹那的な無償化政策が打ち出され続けています。問題はマニフェストではなく、負担と分配を示さない政治にあるのではありませんか。このような状況を国民が認めていることは事実ですが、それでも、民主主義の政治は国民自らが決める貴いものです。政治の側が、党内で議論を尽くす政党政治を根付かせていくことが大切です。教育を通じて、若い世代に政策の見極め方を伝えていくことも重要です。民主主義のレベルを上げていくしか、ありません。(聞き手・高橋健次郎)

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