11月10日 変わる2020大学入試

朝日新聞2019年11月5日12面:記述式の解答公表なぜ出題意図のみ かつては非公表のことも多かった、大学入試の解答を公表する動きが定着してきた。近年入試ミスが相次だ影響を受けたものだが、国立大学の記述式問題では、回答例ではなく「出題の意図」を示すにとどめる場合も少なくない。なぜなのか。文部科学省が2018年8月時点で調査したデータでは、国公私立大で入試の解答を公表していたのは「全て公表」と「一部公表」をあわせて約64%で、国公立大に限ると約48%にとどまった。だが、同じ調査で19年度入試での公表予定を聞くと、国公私立で約77%、国公立だけだと約86%にまで増えている。大学側はこれまで解答公表に積極的ではなかった。状況が変わったが、17年2月に実施された大阪大学と京都大学の一般入試の物理での出題ミスだ。18年になって阪大で30人、京大で17人が追加合格となり、両大学は厳しく非難された。文科省は18ね年6月、全国の大学長などに宛てた「大学入学者選抜実施要項」の中で、解答は「原則として公表する」として、「一義的な解答が示せない記述式の問題等については、出題の意図又は複数の若しくは標準的な解答例等を原則として公表する」とした。国立大学協会も19年1月、同様の方針を出している。一般入試の解答を今年初めて公表したのは弘前、東京、お茶の水女子、京都、広島、福岡教育の各大学など数多い。記述式問題の大半で出題意図だけを示している大学など、形式は様々だ。公表方式を変更した大学もある。名古屋大学では01年2月実施の一般入試から、請求に応じて個別に解答を開示。受験生より予備校などからの請求が多かったという。今年2月実施の一般入試からは、大学ウェブサイトで公表を始めた。佐久間淳一副総長(入試・学生支援担当)は「大学として社会に公表して残るものなので、その点ではそれなりに気は使う。ただ、いま出している範囲のものであればそこまで負担感はない」と話す。記述式の問題では出題意図のみ示す形も多いが、「一つの問題には様々な解答があり得て、予想される全てを示すのは現実的ではない。一例だけを出せば、かえって間違ったメッセージを与える恐れもある」と説明する。同じ地理歴史でも、日本史は「縄文時代~弥生時代の変化について理解できているかを問うものである」といった出題意図のみ、世界史では論述問題で350字の解答例を示すなど、同一科目ごとに事情は異なるし、作問に当たる先生の考え方もある」という。東大も記述式問題の多くで出題意図のみ公表している。数学の場合、文理で問題が異なるが出題意図は共通で、受験生に身につけてほしい数学力などについて長文で記している。個別の問題には解説がない。福田裕穂副学長(入試・高大接続担当)は「作問者は問題を作る際に当然解答を考えるが、それを公表すれば受験生の自由あ発想を阻害する」と話す。大学として解答を示すと、その問題に対する考え方が限定されてしまい、解答の「幅」が狭くなるという。採点時には当初想定もしなかった内容で正解を導き出した答案も出てくるという。その度に検討が必要となり負担はかかるが、「ただ覚えたものを当てはめるのではなく、自分でしっかり考えることを重視したい。それは大学に入ってからの学問にも通じる姿勢だ」。大学側の対応について、駿台教育研究所の石原賢一部長は「大学が模範解答を示しても、受験生の多くはそこまでの答案を書けない。もし標準的な解答を示せば、今度は『このレベルで十分なのだ』と思われてしまう。結局、出題意図という形にならざるを得ない」と理解を示す。同じ試験問題でも学部・学科間で採点の厳しさが違う場合など、一つの解答を公表しづらい事情もあるという。石原部長は、入試に対する社会の意識の変化も感じている。「共通1次試験から40年。マークシート式の試験にすっかり慣れ『必ず一つの正解がある』という発想にとらわれる人も少なくないのではないか」 現状では、解答の公表時期は大学によってまちまちとなっている。合格発表前や発表後の3月中という大学もあれば、年度をまたぐ場合も。著作権への対応など調整に時間を要する場合もあるからだが、公表するのなら少しでも早い方がいいという指摘も出ている。(佐藤剛志)

 

 

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