11月1日 離婚の中で 夢見る熟年3

東京新聞2017年10月28日6面:介護覚悟で年の差婚 70歳の吉沢武(仮名)と38歳の愛(仮名)。32歳の年の差夫婦は東京・谷中のバーで出会った。第一印象は「不機嫌そうな女だな」。常連として顔見知りになって数カ月。ふとしたことからお互いにローリングストーンズのファンだと分かり、話しが盛り上がった。「おもしろい女だ」。恋人になるのに年の差は関係なかった。
当時、長年連れ添い、病気を抱えていた妻を亡くし、介護が必要な母親と二人暮らしだった。認知症が進み、武の手に負えなくなってくると、愛が助っ人として通うようになった。寒い日に母親の体を洗う時、熱いシャワーを壁にかけて浴室を温める。口に入れやすいよう手まりずしを小さめに握る。さりげない心配りにいちいち感心した。「混乱しないように、母親に結婚したことは伝えなかった。愛のことは最後まで誰だか分からなかったのが残念だ」と武は言う。ただ「一度だけ息子の結婚相手にいいのではといったそぶりを見せた時は驚いた」。
結婚したのは4年前。武は最初は気が進まなかった。「このまま籍は入れず、俺が弱ったらバイバイすればいい」。しかし、愛は結婚を望んだ。「介護することになってもいい。一人っ子で両親の介護は覚悟していた。それなら、何人でも同じこと」と思えた。命にかかわるような時に、一緒にいられない。迷いはなかった。
10年以上介護した武の母親を昨年みとり、二人だけの生活になった。毎晩酌をし、「時々テレビに突っ込みを入れながら」(愛)あれこれと語り合う。政治、音楽、仕事、いくら話しても話題は尽きない。「かっこいいし、大好き。だんだん好きになっていくみたい。いずれは一人になると分かっているけれど」
一緒になってから武の生活はがらりと変わった。野菜をふんだんに使った愛の手料理を食べ、公務員として働く愛のために、たまには自分でも慣れない料理をつくる。暇をみつけては歩き、ストレッチ。「彼女に迷惑を掛けないために健康でいないといけない。一人のままだったら毎日飲んだくれていた」
愛は仕事中も1日1回「生存確認のための」メールを欠かさない。親子にも見える二人だが、間違えられることはなという。「何か分かるんでしょうね」と見つめ合った。(敬称略)

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