11日てんでんこ 皇室と震災【12】

朝日新聞2017年6月7日3面:震災から5年。天皇陛下は震災後未訪問の町に「行こう」と強い意思を示した。
2016年が明けたある日。天皇、皇后両陛下は皇居・御所で1年の日程を宮内庁幹部と話し合っていた。東日本大震災から5年の節目。両陛下は震災3県を訪ねる意向を示した。秋には国民体育大会で岩手県訪問が予定されていた。「(震災後)被害の大きい大槌町と山田町は行っておられません。どうされますか」と強い意思を示した。
御所には両陛下が訪れた場所に印をつけた日本地図があるという。両陛下に近い関係者は「両陛下はこれまでに訪れていない被災地について、いつも気にされていた」と話す。大槌町は1997年10月、同町で開かれた全国豊かな海づくり大会で訪れた思い出の地でもあった。
当時、両陛下は宿泊先の大槌町のホテルの部屋から、岩場のハマギクを眺めた。翌朝、砂浜を散策し、近くでめでた。そのホテルが2011年3月、東日本大震災の津波で被災した。1997年に専務として両陛下の散策に同行し、後にハマギクの種を皇居に贈った山崎龍太郎さん(震災時64)は、津波にのまれ行方不明になった。
震災から約7カ月が過ぎた10月、皇后さまの77歳の誕生日にあたって宮内庁が公開した写真に、御所に咲くハマギクが写っていた。写真を見た山崎さんの弟の千代川茂さん(67)は驚いた。ハマギクの花言葉は「逆境に立ち向かう」。両陛下からのメッセージと受け止めた。奮起し、ホテルを再開。名前は「三陸花ホテルはまぎく」とした。
両陛下もこの地に思いを寄せていた。震災から間もない2011年5月、両陛下が自衛隊ヘリから大槌町などの被災状況を見た時のこと。両陛下は「私たちが泊った場所はどこでしょうか」などと質問。かつての様子との変りぶりに心を痛めていたという。
両陛下は16年9月の訪問で、営業を開始したホテルに宿泊し、千代川さんと再会を果たした。両陛下は前回と同じように、ホテルの部屋から海辺を眺めた。その景色は、変わり果てていた。ハマギクは半分ほどになり、散策した砂浜は地番沈下していた。両陛下は悲しげな表情を浮かべていた。
千代川さんは思う。「東京にいても情報は入るだろうが、実際に見て肌で感じて励ますのが陛下のスタイルなのでしょう」 (多田晃子)

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