11日 原発と世論 金曜デモ5年【2】

東京新聞2017年7月7日28面:あの夜の情熱忘れない それぞれの闘い 「わたしたちはでんきよりいのちがだいじです」。東京都立川市の一人暮らしのマンション。グラフィックデザイナーの原田由希子さん(44)は手作りのプラカードや横断幕を今も大事にしまっている。福島第一原発事故で大勢が故郷を追われたのに政府は原発再稼働を進めようとしているー。どうにも納得できず、2012年3月に金曜デモが始まると、官邸前に駆けつけた。デモの参加者が手にするものといえば、のぼり旗が定番だが「カラフルで面白いデザインの方が目立つし、訴えるのも楽しい」。デモのふつうより自身の感覚を優先した。
20万人(主催者発表)が集い、デモが最高潮に達した5年前の6月29日夜。「皆の思いが形になって時代が変わる。民主主義ってこういうことじゃないか」。人の渦にのまれながら、そう感じた。が、その二日後、大飯原発(福井県おおい町)が再稼働する。デモの参加者は急激に減り、原田さんも年末には官邸前へ足が向かなくなった。「正直、週末ごとに片道1時間かけ、交通費を使って都心に出て行くのは負担でした」。ただし「(脱原発を)あきらめたわけじゃない」。
地元で小さなデモを企画したこともあるし、都議選や国政選挙では原発への考えを一票の基準にしてきた。昨年4月、電力の小売り自由化が始まると、太陽光など再生可能エネルギーを中心に発電する電力事業者を選んで契約した。友人、知人にも勧めている。
「消費者が、原発の電気を買わなくなれば、原発は止まる。今はこれが私の脱原発アクションなんです」 プラカードを見ると、みんなが思いを一つにしたあの夜の熱情がよみがえる。その思い。ふだんは目につかない場所にしまっているかもしれないが「みなな、ぜったい捨てていない」と確信している。
「さいかどう、はんたい」。官邸前から西へ約250キロ離れた名古屋市東区の関西電力東海支社前で、藤原葉月さん(45)=名古屋市中村区=は今も毎週金曜日、声を上げている。ダイビングが趣味で、中でも福井・若狭湾の美しい海が大好き。福島第一原発の事故後、その若狭が原発銀座と呼ばれていることに我慢できなくなった。官邸前の金曜日デモに刺激され、12年4月から名古屋でもデモを始めた。東京で脱原発の声を聞きながら感じた疑問がある。原発は電力を使う人がいるから動く。電力を使うのは東京だけなのか。「これはわたしたちの問題だ」
あの夜は名古屋でも400人が集まったが、今は100人にも届かない。それでも「訴え続けることが大事」と話す。正確な統計はないが、官邸前の金曜デモが飛び火し、全国で実施されているデモは5年たった今も数十カ所に上る。中には小さな火が燃え上がり、地元政界を焼き焦がした地もある。
電力小売り自由化 2016年4月から、各家庭が電気を購入する会社を自由に選ぶことができるようになった。新たに400社近くが電力小売り事業に参入(新電力)。電気料金の値下げや、再生可能エネルギーにる発電などをアピールして顧客拡大を図っている。東京電力など既存の大手電力会社から新電力に切り替えた契約者は、電力・ガス取引監視等委員会のまとめで、全契約者数の3.5%にあたる304万件(今年3月現在)

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