10月9日 日曜に想う 編集員 福島申二

朝日新聞2019年10月6日3面:大人の甘え、若者の怒り センセーショナリズム(扇情主義)が大手を振った19世紀末のアメリカ新聞界で、新聞王と呼ばれた名高い経営者ハーストは記者に訓示したそうだ。「1面を眺めた読者が、『これはすごい』と言い、2面を見て『これは大変だ』と言い、3面を見て『助けてくれ』と言うような新聞を作りたまえ」 大衆紙の極意というべきか。売らんがための紙面合戦が、誇張ありウソもありの記事を生んでいた時代である。古いエピソードをふと思い出しのは、3週間前の日曜日の本紙をみてのことだ。「気候危機」のタイトルカットをつけた1面から2面にわらる記事を、すごい→大変だ→助けてく、と思って読んだ人は多かったのではないか。その後の「気候危機」のシリーズも、同じ思いに駆られながら私は読んだ。もちろん扇情記事ではない。アマゾンの熱帯雨林火災による今年1~8月の二酸化炭素(CO2)の排出は自動車3千万台の1年分に相当する。欧州を熱波が襲ったこの7月は世界の平均気温が観測史上最も暑い月になったー。ほかにも多々、地球は温暖化に関連する危機的な症状でデータに満ちている。ありのままを報じればハーストが訓示したような紙面になるところまで、現実はきているというのである。ところがそうした事実を虚構のように言う人がいる。親玉格は米大統領のトランプ氏だ。温暖化をフェイクと言い張る頭には、化石燃料の煙こそ「偉大なアメリカ」という図があるのだろうか。日本の偉そうなことは言えない。国連気候変動サミットに首相は出席せず、小泉進次郎環境相は「セクシー」と言ったきり具体的な行動は語らなかった。対策の鈍さに世界の風当たりは強い。今回のサミットは、ダレタ・トゥンベリさん(16)のスピーチによって記憶されるだろう。もし自然というものに感情と表情があって、手荒く地球に君臨するホモ・サピエンス(の大人)をにらみつけるなら、この少女のようだおるか。サミット前には世界中で400万人を超す若者の一斉デモもあった。もとは彼女1人の闘いから広がった動きだ。ダレタさんやデモの若者の怒りに、今年が生誕90年になりエンデを思った。前にも当欄に書いたが、ドイツの世界的な児童文学者は生前、環境破壊を、生まれてくる世代に対する戦争、いわば第3次世界大戦であると言っていた。容赦なくその戦争を進めながら、大人たちは自分にこう言い聞かせて良心をなだめるのだと、エンデは続けてこう言う。「わたしたちがおこなったひどうことを償うために、子孫はなにか思つくにちがいない、と」(「エデンのメモ箱」)それに呼応するようなダレタさんの批判、「私たちの世代が、今は存在もしない技術で膨大なCO2を吸収することをあてにしている」を聞けば。大人はもう未来への甘えを断ち切るほかない。この5月、脚本家の倉本聰さんと対談する機会があった。消費文明への厳しいまなざしを持つ人だ。かつて演劇人を育てるために北海道に開いた「富良野塾」の起草分にもそれは表れている。 あなたは文明に麻痺していませんか 石油と水はどっちが大事ですか 車と足はどっちが大事ですか ・・そんな問いかけを連ねていく起草文は、最後にこう締めくくられている。 あなたは結局何のかんのと云いながらわが世の春を謳歌していませんか ・・最後にこの2行には、頭をがつんとやられる思いがする。 人間の仕業に地球が悲鳴を上げている時代、だれもが憂い顔はする。しかし憂いが意志や行動にまで高まることは少ない。なんだかんだと口では言っても、すぐに忘れて消費文明の湯船にどっぷりつかっている。自分のいい加減さを鏡に映されているようで、顔が赤らむ。あすから始まるモーベル賞週間、もしグレタさんが平和賞なら人は驚くだろう。何で、あんな子がーと。私はありだと思っている。日本国首相が推薦した米国大統領よりも、よほどふさわしい。

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