10月8日 ふるさと納税 農家支援の輪

日本経済新聞2019年10月5日夕刊1面:台風や天候不順で被害 「訳あり品」返礼/交流も盛ん 自然災害や天候不順で被害を受けた農家を、ふるさと納税により支援する動きが広がってきた。共感を呼べば全国から寄付が集まり、傷はあっても食べられる農作物を返礼品にすることで廃棄を減らせる。寄付した人が手紙やSNS(交流サイト)で生産者とやり取りするなど、交流のきっかけにもなっている。「かわいくておいしいフルーツ大福。梨を使っています」「白あんと梨、すごくおいしそうです」 肉筆の礼状届く 9月上旬、福井県坂井市の梨農園のフェイスブックで、梨を使った新商品を紹介したコメントに消費者から反応が寄せられた。「おいしそう」と返したのは東京都内に住む主婦の亀山久美さん。SNSでやり取りするようになったきっかけはふるさと納税だった。2018年9月の台風で、坂井市は梨が木から落ちる被害を受けた農家を手助けしようと、傷はあるが食べられる「訳あり梨」をふるさと納税の返礼として支援を訴えた。亀山さんも仲介サイト「ふるさとチョイス」を通じ寄付したところ、農場から肉筆の礼状が届き心を打たれた。そこから交流が始まった。「ふるさと納税を始めた当初は返礼品が目的だった。災害支援は使途がイメージでき、農家と触れ合う魅力も知った」と亀山さんは話す。「こだわりを直接聞けば愛着がわき、買ってまた食べたくなる」。今では都内にある福井県のアンテナショップにもしばしば足を運ぶようになった。礼状を送った近藤美香さんは両親や妹と梨農園を営む。返礼品向けの1800個の梨は半日で募集が埋まった。「梨がじゅうたんのように地に落ちた風景を見て途方にくれたが、寄付と温かいメッセージに励まされた」傷が激しかった梨をすり潰して加えたレトルトカレーも開発。市が地元産のコシヒカリとカレーをセットにした返礼品を用意し、現在も1万円から寄付を募る。梨農園を支援する寄付として約80万円が集まった。 使途に知恵絞る 山形県天童市は19年6月、「パチンコ玉ほど」(同市)のひょうが降り、リンゴにくぼみができた。被害総額は1億3千万円以上に上った。助け舟として浮上したのがふるさと納税だ。くぼみをエクボ(EKB)に見立て「好ひょうEKBりんご」として1万円以上の寄付に2箱10㌔を返礼品として8月から募集。これまでに約150件の寄付が寄せられた。農家の蜂谷正信さんは「畑のリンゴはほぼ全滅だ。被害を補償する保険にも入っておらず金融機関からの借り入れも検討せざるをえない」と支援を訴える。鹿児島県徳之島では梅雨が長引き、春の気温も低く推移したため町内で生産するマンゴーが19年は小ぶりとなった。出荷できず売り上げが前年に比べて2~3割減る農家も出たため、町は10㌢戦後の「ちょっと小ぶりな完熟マンゴー」を返礼品とし、収穫期の7~8月に寄付を募った。ふるさと納税は6月、過度な返礼競争を是正するため、返礼品を寄付額の3割以下の地場産品に限る新制度に移った。災害支援のために知恵を絞れば知名度の低い自治体でも資金を集められ、本来の趣旨にある寄付文化の醸成につながる。ふるさとチョイスは被災した作物をサイトで紹介し、寄付を募る事業を4月に始めた。自治体からの115品の登録に1億1千万円が集まった。手紙などで寄付者と生産者に絆が生まれる例も多いという。同社の担当者は「全国の自治体に活用を提案したい」と話す。 熊本地震きっかけに拡大 復興応援 手法多彩に ふるさと納税による自然災害への支援は2016年の熊本地震で一段と広まった。現地の自治体が住民の安否確認や避難所の開設などに追われる中、被災していない自治体が代わりに寄付を受け付ける試みが始まった。1つの納税仲介サイトだけで全国から約20億円が集まった。18年9月の北海道胆振東部地震では「被災自治体への寄付」として市町村を特定せず迅速に寄付事業を代行する自治体もあった。個々の被災自治体への寄付も通常の返礼品を贈るものを含め、18年度に厚真町が前年度比5.4倍の約11億円、むかわ町も2.2倍の約1億円に上った。9月に千葉県などに大きな被害をもたらした台風15号では、寄付金の3割を収入減に悩む農家などを指定して寄付し、残りは自治体に復興に使ってもらう仕組みも仲介サイトで登場した。寄付者が自治体の返礼品を受け取らず、被災した農家に譲る発想だ。千葉県内の被害に対しては納税仲介サイト「さとふる」でも返礼品のない寄付にすでに3千万円以上集まり、ふるさと納税で被災地を支援する意識が高まっている。(高畑公彦)

朝日新聞ASAの伸光堂西部販売 森林文化協会

ご予約・お問い合わせはお気軽に

Tel0120-740-276

〒352-0011 埼玉県新座市野火止8-14-29

ページトップへ戻る