10月7日 池上彰の新聞ななめ読み

朝日新聞2017年9月29日15面:降ってわいた解散・総選挙 ピンと来るか感度の差 突然浮上した解散・総選挙。新聞各紙はどう報じたのか。朝日新聞は9月17日付朝刊の1面トップで「首相、年内解散を検討」と書きました。本文には「安倍晋三首相は年内に衆院を解散する検討に入ったと与党幹部に伝えた」「複数の政権幹部が明らかにした」とあります。「政権幹部」」から情報を得たのでしょう。「政権幹部」とは誰か、明らかにしていませんが、、これは情報源秘匿という記者の大原則によるものですね。
次は同日付の日経新聞。1面に「早期解散強まる」の見出しで、「公明党は16日に幹部が協議し、年内解散が選択肢に入ったとの認識を共有した。これを受け、公明党の支持母体の創価学会は17日に選挙対策の関連会議を開く」と書いています。公明党・創価学会が選挙に向けて走り出した。早期解散は間違いない。日経は、こう判断したのでしょう。
これに対し、同日付の産経新聞は「首相衆院解散を決断」と1面トップで報じました。本文では「安倍晋三首相は、28日の臨時国会召集から数日以内に衆院を解散する方針を固めた」と断じています。これはもう、安倍首相kら直接聞いたとしか思えない表現です。日頃から安倍首相を支持する論調の新聞ならではでしょうか。ただ、本文には「公明党の支持母体である創価学会は16日昼に方面長会議を緊急招集した」とあります。公明党・創価学会関係者からも情報を得たのでしょう。惜しむらくは「10月29日投開票有力」と見出しに書いたこと。結果的に正確ではありませんでした。
一方、東京新聞は「与党内で、安倍晋三首相が年内の衆院解散・総選挙を検討しているとの見方が広まり、選挙準備が本格化している。早ければ28日召集の臨時国会冒頭での解散も想定される」と書いています。産経が「臨時国会召集から数日以内」と幅広い表現なのに対し、絞り込んでいます。
地方紙を中心に記事を配信している共同通信も、このニュースを報じています。私の手元にある中国新聞(本社・広島市)も信濃毎日(本社・長野市)も同日付1面トップに「自民 公明両党は、安倍晋三首相が年内の衆院解散・総選挙を選択肢として検討しているとの見方から選挙準備を本格化させた。公明党は16日、緊急の幹部会合を東京都内で開き、9月28日召集の臨時国会冒頭や10月22日投開票の衆院3補選後の解散もあり得るとの認識で一致した」と書いています。情報源は公明党のようですね。
では、安倍首相が自身の改憲案について「私の考えは読売新聞を熟読してほしい」とまで言い切った読売新聞は、どうか。同日付の1面には影も形もありません。2面の中ほどの目立たない場所に「早期解散論 与党に浮上」という記事があるだけです。これはどいうしたことか。大きく出遅れています。安倍首相からのサインはなかったのでしょうか。安倍首相から情報提供がなくても、公明党をきちんと取材していれば、他社のように情報が取れたはずなのですが。
そして毎日新聞。2面の下に小さく自民党の竹下亘総務会長が、衆院解散・総選挙について「そう遠くないという思いを全ての衆院議員が持ち始めている」と講演したことが掲載されています。竹下氏は「選挙は近いのかなというような思いもした」とも語っていることを報じていますが、それだけです。本当は、この発言でピンと来て、他の記者たちが確認に走らなければいけなかったのです。
日頃からアンテナを張り巡らし、政治家の片言隻句に敏感に反応する記者の感度が問われています。とはいえ、いまの時期に衆院を解散する大義などないというのが常識的な見方。安倍首相の突然の変心にはついていけないもの無理はありませんが。
◇東京本社発行の最終版を基にしています。

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