10月18日 北陸新幹線 遠い完全復旧

朝日新聞2019年10月16日3面:全線開通に1~2週間 本数5~6割で 台風19号による千曲川の氾濫で、北陸新幹線の多くの車両が浸水した痛手がJRにのしかかっている。水につかった車両が北陸新幹線全体の3分の1にのぼる上、「代車」を使えない北陸新幹線ならではの特殊事情もあり、完全復旧を遠ざけている。 周波数の壁 他線車両使えず 東京と金沢を結ぶ北陸新幹線は、大幅に本数を減らして東京ー長野と金沢ー上越妙高で繰り返し運転している。全線の直通運転までは早くて1~2週間程度かかる見込みだ。浸水したJR東日本の長野新幹線車両センター(長野市)は、長野駅から10㌔ほどの線路沿いにある。JR西日本の白山総合車両所(石川県)とともに、北陸新幹線のメンテナンスを担う。北陸新幹線は、JR東の「E7系」19編成、JR西の「W7系」11編成の計30編成で運用されており、このうち車両センターに止めていたE7系8編成とW7系2編成が水につかった。JR東によると、15日の段階で詳しい現地調査はできておらず、車両の被害状況も分かっていない。しかし、ある新幹線技術者は「床下には車輪だけでなく、モーターやブレーキを制御する電子機器も多い。半導体が水につかってしまえば、部品全体を交換するしかない」と話す。客室内でもシートなどが水につかっていれば、交換する必要性があるとみられる。新幹線車両の寿命はおおむね15年とされるが、E7系、W7系とも2015年の北陸新幹線開業に合わせて開発された最新鋭車両。1編成12両の製造費は約33億円とされ、仮に被災した10編成がすべて廃車となった場合、損害額は車両だけで三百数十億円にのぼる計算だ。復旧が難しい理由はそれだけではない。全体の3分の1が被災したことによる車両不足も深刻だ。修理できたとしても、安全性の確認には慎重な点検が必要で、再び営業走行できるまでには相当な時間がかかるとみられる。新造するにしても新幹線車両は「注文製造」のため、1年以上はかかるという。東北・上越新幹線から代わりの車両を手配するのも難しい事情がある。新幹線は沿線の電力会社の周波数をもとに、東海道、山陽、九州は60ヘルツを採用している。ところが、北陸は東京電力(50ヘルツ)、中部電力(60ヘルツ)、東北電力(50ヘルツ)、北陸電力(60ヘルツ)と目まぐるしく沿線の周波数が切り替わるため、専用の切り替え対応システムを搭載した車両しか走れない。さらに、かつて在来線の難所として知られた群馬・長野県境の碓水峠越えにあたる安中榛名ー軽井沢の区間は、全国の新幹線でも有数の急勾配な箇所だ。このため、E7系やW7系はモーター出力やブレーキ性能を高めた専用設計となっており、他の車両で置き換えられないという。JR東によると、直通運転が再開しても車両不足のため、運転本数が5~6割にとどまる暫定ダイヤが長期にわたりそうだ。不通区間のバイパスルートとして、信越線の長岡ー直江津では臨時快速列車を17日まで走らせる。(細沢礼輝)
金沢旅行解約続々「新幹線景気」に暗雲 2015年の北陸新幹線金沢開業の効果もあり、好景気に沸いてきた石川県。浸水車両の復旧に時間がかかれば、観光や経済への影響は避けられず、関係者に焦りが広がる。「影響は深刻。観光客だけでなく、出張客も減ってしまう」。金沢市旅館ホテル協同組合の担当者は不安を募らせる。市内の宿泊施設では12日に450人、13日に400人のキャンセルがあったという。小松市の粟津温泉でも、12日からの3連休の間に、4旅館で620人のキャンセルを受けたという。石川県によると、18年の県内の観光客は2491万人で、開業前の14年より330万人増加した。海外からの宿泊者数も約68万人と2.3倍になっている。新幹線運休を受け、全日空と日本航空は15日、小松空港(小松市)と羽田を結ぶ定期便の一部に通常より座席が多い機体を使った。谷本正憲知事は15日、「新幹線が水没するとは想像もしていなかった。JRには早期の運転再開をお願いする」と述べるとともに、在来線特急や航空機も活用し、観光客のニーズに応える必要があるとの認識を示した。(浅沼愛、木佐貫将司)

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