10月17日 河川氾濫 地形も要因か

東京新聞2019年10月16日2面:多摩川一部 排水管逆流し冠水 日本列島の広範囲に激しい雨を降らせた台風19号は、各地で河川の氾濫を引き起こした。詳しい原因の解明はこれからだが、水が行き場を失い、堤防の決壊につながった可能性が考えられるケースがあるなど、河川の地形的な問題が浮かぶ。川崎市の一部で起きた冠水は多摩川の水が排水管を伝って逆流したことが原因だったことが判明し、市の事前の措置で防げた可能性も出てきた。 ▽支流 今回の台風では、長野県の千曲川や、福島、宮城両県を流れる阿武隈川をはじめ7県の52河川73カ所で堤防が決壊した。広い範囲が浸水して多くの犠牲者が出たほか、電気や水道、交通などインフラへの影響も長引く。なぜ決壊が起きたのか。岡山大の前野詩朗教授(河川工学)は、一部の河川では「バックウオーター現象」が起きた可能性があると指摘し、タイプは二つあると話す。一つは、本流の水量が増し、支流の水が合流地点でせき止められて行き場を失い、あふれ出すタイプだ。昨年7月の西日本豪雨の際、岡山県倉敷市真備町地区を流れる高梁川がの支流が決壊したケースが知られている。12日夜、多摩川に注ぐ平瀬川から水があふれ出して川崎市高津区のマンション1階が浸水し、13日未明に男性1人の遺体が見つかった。前野教授は、平瀬川ではこのタイプのバックウオーター現象が起きたとみる。 ▽川幅 もう一つは下流で川幅が狭くなって水が流れる量が少なくなり、上流の水位が上昇する現象。千曲川で起きた可能性があるという。国土交通省北陸地方整備局によると、堤防が決壊した長野市穂保付近では川幅が約800㍍なのに対し、6~7㌔下流では山と山に挟まれ、川幅は約210㍍になる。バックウオーター現象の対策としては堤防の強化や、川底を掘って水の流れる量を増やすことが考えられる。ただ前野教授は「温暖化などの影響で大規模化する最近の水害では、想定以上の雨量で決壊する恐れがある」と限界を指摘。「堤防は『守ってくれるもの』ではなく、異常洪水時に『非難のための時間を稼いでくれるもの』と考えた方がよい。自ら早めに非難する必要がある」と強調した。 ▽逆流 東京と神奈川の境を流れる多摩川の南側に位置する川崎市の武蔵小杉駅周辺。この付近で多摩川が氾濫しなかったが、マンションが立ち並ぶ街中には泥水があふれ、道路が通行止めになったほか、場所によっては建物1階の大部分が水没した。駅も電気系統に支障を来し、自動改札機やエスカレーターが使えなくなった。川崎市によると、雨水を多摩川に流すはずの排水管から、川の水が逆流したことが原因という。通常は、排水管の出口部分よりも多摩川の水位が低いが、増水で上昇した。排水管をふさぐゲートがあるが、雨水が街中にたまっていくのを回避すべきだと考えて閉じなかった。市の担当者は「検証はこれからだが、川の水位が極端に上がったことが要因」と話す。「水害列島」の著作がある公益財団法人リバーフロント研究所の土屋信行技術参与は「川の水位が高いのにゲートを開けていれば、逆流するのは当然。本当に閉じなかったのであれば、あり得ない判断だ。大雨によって住宅地が冠水する恐れがあっても、逆流による洪水を防ぐことを優先すべきだった」と指摘した。

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