10月15日 米のIT田舎の挑戦

朝日新聞2019年10月12日7面:シリコンバレーだけじゃない 米中西部、アイオワ州ジェファーソン。人口4千人余りの田舎町で、19世紀に建てられた古びたビルに入ると、洗練されたデザインの空間で人々がリボンカットの瞬間を待っていた。9月7日、IT企業ピラー・テクノロジーが「鍛冶場(Forge)」と名付けたオフィスを開設した。「『鍛冶場』の使命は、人々を集め、未来のイノベーションを起こすための潜在力を解き放つことなんです」。この事業に取り組んできたリンク・クルーガー氏(51)は、人々を案内しながらそう力説した。「鍛冶場」では州内の11の学校区から若者を集め、4カ月間、無料でソフトウエア開発訓練を提供をする。その後も6か月間、「見習い」として給料を払い、ソフトウエア開発の実務に携わってもらう計画だ。事業に賛同する米農業大手コルテバ・アグリサイエンスなどがコミュニティーカレッジに奨学金を提供し、「鍛冶場」の卒業生からのインターン採用も検討してる。クレーガー氏はアイオワ州生まれだが、ジェファーソンのことは数年前まで、名前すら知らなかった。田舎に若者向けにのIT教育をする拠点をつくりたいー。そんなアイデアを4年前、知人のクリス・ディール氏(34)に話した際、彼の故郷の街、ジェファーソンを紹介された。ディール氏はアイオワ州立大学などで工学を学んだ後、州外の貧困地域で数学や化学を教える仕事に就いていたが、2011年にアイオワ州に戻ってきた。IT人材は西海岸のシリコンバレーや、大学・研究機関が集まるボストンなどに集中。ディール氏は「我々は何十年も『両岸』に人材を輸出し続けてきた。今後は人材の教訓をここで続け、ずっと残ってもらえるようにすればいいと考えた」と話す。意気投合した2人は、自治体なども巻き込んで準備を進めてきた。「鍛冶場」の開設式典で、シリコンバレーの選挙区から選ばれたロー・カンナ下院議員(民主)は、「企業は慈善事業でここに来ているのではない。勤勉な職業観や教育システムが根付き、私の選挙区ほどお金もかからない。(人材を獲得できれば)経済的にもつり合う」と訴えた。IT革命やグローバル化がもらたした「都市」と「田舎」の分断は世界的にポピュリズムが台頭した大きな要因とされてきた。米シカゴ大学経営大学院のラグラム・ラジャ教授は近年、「地域社会」の復権が必要だと訴える。「IT革命の負の影響を相殺するためにこそ、ITを使うことができる」。筆頭に挙げる対策が、テレワークの導入によって、年への人口集中へに歯止めをかけることだ。クルーガー氏は言う。「一つでも成功モデルをつくり、ほかのところでもやれると証明したいんだ」(米アイオワ州グリーン郡ジェファーソン=青山直篤)

 

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