10日 患者を生きる 永六輔の大往生

朝日新聞2017年4月7日25面:親子で笑顔 翌日旅立つ 2016年春から自宅で訪問診療を受けるようになった永六輔さんは、自身のラジオ番組にも2月に出て以降、休んだままでいた。次女の麻理さん(55)は「人生の半分以上を永六輔として過ごして来たのだから、最後にもう一度『ありがとう』でも『さようなら』でもいい。ラジオを聞いている方に一言届けたい」と考えた。
週に1度訪問してくれる新宿ヒロクリニックの英裕雄院長(56)に頼み、言語聴覚士によるリハビリも受けることにした。日中、介護していた麻理さんは発声練習を手伝ったり、口の周りの筋肉をマッサージしたりした。「復帰がかなわなくても、本人の気持ちを前向きにしたい」という思いだった。ラジオ番組を休んで半年近く過ぎた16年6月、麻理さんは永さんと2人だけになった時に尋ねた。「すごく残念だけれど、かなかなスタジオに行けないから、ラジオは1回、おしまいにするということでいいですか」「うん」とうなずいた。
6月いっぱいで、永六輔の名前がついた番組の終了が決まった。番組が終わって1週間が過ぎた7月6日の夜。「ベット脇に座りたい」と言う永さんの体を支えようと、麻理さんが後ろに回って背中を支え、長女の千絵さん(58)が足元に座る格好で、親子3人でテレビを見た。
永さんは好物のアイスキャンディーを味わいながら、「おいしいね」とはっきり口にした。麻理さんが、口を動かすリハビリ用に取っておいたあたりめを手渡すと、永さんは、おいしそうに2本しゃぶって口に入れた。のみ込みそうになるのを見た千絵さんが「わー、それはやめて」と言って口から引っ張り出すと、永さんは「あぶないね」と言って、親子で大笑いした。
「まだまだ、いえけるね。明日から、あたりめでリハビリだ」。姉妹は永さんがはっきりと言葉を口にしたことを喜び、また笑った。
これが親子3人だけで過ごした、最後の時間になった。翌7日の午後2時前。2人の娘ら家族らに囲まれ、永さんは旅立った。
「それじゃ、僕はお先に」そんな声が、聞こえてくるようだった。(宮島祐美)

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