1月26日 沖縄と経済界の30年「上・下」

朝日新聞2020年1月21日7面:本土の戦中派、一肌脱いだ 全英女子オープンで優勝した渋野日向子ら「黄金世代」の活躍で盛り上がる日本の女子プロゴルフ界。そのシーズンの開幕戦として定着する「ダイキンオーキッドレディス」は、1988年に「沖縄と本土の架け橋に」との思いで立ち上がった。「当時の沖縄は有名な観光地ではなく、ほとんどの経営者は訪れたこともなかった」。大会を主催するダイキン工業(大阪市)の会長、井上礼之は振り返る。戦争で傷つき、発展が遅れた地。実情を知らせ、本土の経済界が力を貸せないかー。「財界の鞍馬天狗」と呼ばれた中央財界の重鎮で、元日本興業銀行(現みずほ銀行)頭取の故中山泰平が一肌脱いだ。旧知の琉球放送最高顧問、小禄邦男が大会の主催企業を探していたこともあり、経済人を呼び込むきっかけとした。「沖縄の経済人は東京でものが言えない。なんかみずぼらしいぞ。本土の経済人とがっちりスクラムを組んで、人脈をつくりなさい」。小禄は、奮起を促す山中の言葉をいまでも覚えている。2人に口説かれ、ダイキンが引き受けた。プロとアマチュアが交流するゴルフ大会と前夜祭を企画し、県内外から100人超の経営者らが参加した。これが弾みとなり90年、秩父セメント(現太平洋セメント)会長の故諸井虔、ウシオ電機会長の牛尾治朗を中心に沖縄と本土の約50社を会員とした「沖縄懇話会」が発足。メンバーは「経営者が先頭を切って沖縄を改革しようとした。新鮮で意欲に満ちていた」(牛尾)。懇話会は地元の課題に向き合い、那覇空港の滑走路の拡張や高級ホテルの誘致などを提言してきた。7年前に現地で始めた「沖縄大交易会」は全国の特産物を海外に売り込むもので、国内有数の商談会に成長した。一方、基地問題で95年に政府と県が対立すると、懇話会が両者を取り持つなど経済面以外で貴重な役割も果たした。懇話会の発足から30年。沖縄のリゾート化が進み、観光客は年1千万人を超えてハワイと肩を並べるまでになった。会にも後押しされて出馬した元県知事の稲嶺恵一は「日本のはずれでしかなかった沖縄を軍事ではなく、経済で『東アジアのキーストーン(要石)』にしてくれた。山中さんたち戦争を知る経済人たちに、沖縄への償いの気持ちがあったからだろう」と語る。懇話会は昨年12月、那覇市内で30回目となる節目の会合を開いた。これまでの苦労をねぎらったが、手放しでは喜べなかった。観光立県とはいえ、1人当たりの県民所得は全国最低。「製造業不毛の地」との汚名を返上できないままでいた。=敬称略(福山亜希) ◇沖縄経済と、それを本土から支えた経済界とのつながりを2回にわたり伝えます。
朝日新聞2020年1月22日7面:「日本製」輸出 地の利いかす おせち料理の出荷準備がピークを迎えた昨年12月、沖縄県うるま市の工場は、冷凍した車エビの煮物をパックに詰める作業に追われていた。これから県内外の百貨店やスーパーに発送されていく。冷凍食品の凍結機をつくるアンリッシュ食品工業は、奈良県から工場を移した。海外の小売店向けに「冷凍ずし」の販売も開始。愛媛県のサケや青森県のホタテなど各地の特産品を沖縄に集めてすしを握り、凍らせてアジアへ空輸する。社長の二宮大朗は「沖縄から短時間で届けられる。海外でもきっとあたるはずだ」と期待する。海沿いの埋め立て地に2015年、会社をつくった。一帯は税制の優遇などが受けられる特区で、アンリッシュなど約70社が進出した。200㌶ほどの用地の8割が埋まっている。淡水化装置メーカーのワイズグローバルビジョンは、競合他社よりも小型な装置が特徴だ。アジア中心に11カ国で売り、電気の通っていない離島や漁船の生活用するなどに使われている。ものづくりの新たな芽が出てきたのは、物流網ができつつあるからだ。沖縄と本土の経済人でつくる沖縄懇話会が、産業を支えるために必要だと訴えてきた。09年に那覇空港に中継拠点を設けたのは全日空(現ANAカーゴ)だ。空路で約4時間圏内にあるアジア20億人の巨大市場を引き寄せた。例えば、夕方に本土で荷物を出すと、那覇を経由して翌朝には香港や上海など届く。冷凍ずしのアンリッシュもこのスピードが決め手となった。ワイズグローバルビジョンの装置も小さいので空輸しやすい。本土よりもアジアに近い利点を生かし、沖縄から「日本製」を発信する。日本総合研究所の八幡晃久シニアマネジャーは「観光地の印象が強いが、地の利がある沖縄での事業が有利な企業は、実は少なくない」と指摘する。半導体機器メーカーのナノシステムソリューションズも、台湾や韓国の半導体大手との商談のしやすさを求めて首都圏から沖縄へ移転。実際に仕事をすると、冬でも温暖な沖縄の気候が精密機器の管理に向いていることがわかり、移転前よりも空調費を3割カットできた。アジアからの乗り入れ便が増え、さらに商機が広がった。「ここをいろいろな航空会社の機体でいっぱいにすることが夢だんです」。整備中の航空機2機が並ぶ新築の格納庫に、MROジャパン総務課長、植草武の声が響いた。機体整備を担うMROは1年前に大阪(伊丹)空港から移ってきた。懇話会に30年携わってきたダイキン工業会長の井上礼之は「基地に反対といいながら、基地に雇用を頼る矛盾が沖縄にはある。沖縄が自力で経済をまわせるようになるきっかけづくりを、今後も続けたい」と話した。=敬称略(福山亜希)

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