1月25日 フレコンバッグ流出「1~3」

朝日新聞2020年1月20日夕刊7面:除染廃棄物の袋 台風で散乱 全身が泥まみれだった。耳や鼻の穴、髪の付け根やわきの下にまで泥が入り込んでいた。昨年10月12日夜、大型の台風19号は、福島県にも大きな被害をもたらした。翌朝、同県南相馬市で起きた土砂崩れの現場に向かった。山の斜面が激しく崩れ、集落が土砂にのみ込まれていた。少し高いところから写真を撮ろうと、緩やかな崖を登った。と、その瞬間、背後の沢から水が噴き出し、足元が崩れた。土砂に巻き込まれ、数㍍頃がった。四つんばいになって土砂から抜けだし、草むらで仰向けに寝転がった。両手で全身を触ってみたが、幸いケガはなさそうだった。問題はカメラだった。左肩にかけていた一眼レフが、泥で使用不能になっていた。カメラがなければ、災害取材は難しい。「こんあ大事なときに・・」と落胆した。その時だった。同僚から「田村市にある仮置き場が浸水し、除染廃棄物を詰めたフレコンバッグが川に流れ出たみたいだ」との情報がスマートフォンに入った。 2011年3月11日に起きた、東京電力福島第一原発の事故。福島県内では、除染によって生じた約1400万立方㍍の廃棄物を、フレコンバッグと呼ばれる保管袋に詰め、居住地域から離れた仮置き場などで保管してきた。17年秋に除染廃棄物を運び込む中間貯蔵施設(双葉町、大熊町)が本格稼働し、仮置き場の数や除染廃棄物の量は減ったが、県内にはまだ約930万立方㍍の除染廃棄物が約730カ所の仮置き場などに保管されていた。「放射性物質が川に流れ出たら大変だ」。取材拠点で予備用のカメラを入手し、約30㌔離れた田村市の仮置き場に向かった。現場に到着し、目を疑った。仮置き場は見渡す限り水浸し。本来は石垣のように整然と積み上げられている黒色のフレコンバッグが、周囲に散乱している。多くは水没したり、濁流に流されたりしたのだろう。袋はひしゃげ、仮置き場の柵に引っかかったり、近くの川の斜面にへばりついたりしていた。「一体何が起きたんだ」仮置き場を管理する田村市に電話で聞くと、ここで保管されていた除染廃棄物は計2667袋。浸水による流出量はまだわらないという。環境省はこれまで、仮置き場から放射性物質が飛散・流出しないよう、遮水シートなどを敷き詰めた上にフレコンバッグを積み、上部を防水シートなどで覆うなどして安全対策を取っていたはずだった。にもかかわらず、なぜ大規模な流出が起きたのかー。現場の状況がわかるよう、仮置き場の全景をスマートフォンで動画撮影し、すぐさま会社に送信した。と同時に、動画をツイッターにもアップした。直後、閲覧数が急増し、国内外から問い合わせが殺到した。「放射性物質なのに、こんなに管理がずさんなの?」「中身も川に流れちゃったんじゃないの?」投稿した動画2本の再生回数は、最終的に計80万回を超える。(三浦英之)
朝日新聞2020年1月21日夕刊7面:中身は川へ表情ゆがんだ 夜が明けるのを待っていた。台風19号の通過から3日が過ぎた昨年10月16日朝。原発事故で生じた除染廃棄物を詰めたフレコンバック(保管袋)が川へと流出した、福島県田村市の仮置き場に車を止めて張り込んだ。前日夕、仮置き場の脇を流れる川を下見したところ、対岸の雑木林に張り付いている、フレコンバッグと見られる黒い袋を見つけた。川が増水していて近づけないが、水量が減れば、きっと環境省の調査団が回収に来る。調査に同行することで、本来安全に管理されなければならない除染廃棄物の仮置き場で一体何が起きたのかを報じたいと思った。フレコンバッグの流出発覚から2日後の15日、政府は早くも事態を鎮静化する方向に動いた。小泉進次郎環境相(38)は同日の参議院予算委員会で「回収されたものは容器に破損はなく、環境への影響はない」と発言していた。「本当にそう言い切れるのか?」現場の状況を見る限り、環境相の発言は時期尚早のように思えた。仮置き場を管理する田村市の担当者は、流出した袋の数を「不明」とし、中身の除染廃棄物が漏れだした可能性についても「調査中」と答えていた。第一、まだ本格的な調査が始まっていない。同様の事故は2015年秋、飯館村でも起きている。村内の保管場所が大雨で浸水し、448袋が流出した。今回は再発だ。川に流れ出た除染廃棄物の放射線量が環境に影響を及ぼすほどのものではないとしても、保管のあり方に問題はなかったのか。午前10時過ぎ。男女十数人が5台の車で仮置き場前に到着した。作業服には「環境省」の文字。環境所の調査団だ。車を飛び出して、即座に同行を申し出た。「許可、取っているんですか?」若手職員には拒まれたが、団長と直接交渉した結果、「調査の邪魔はしない」ことを条件に取材を許可された。調査団は1列になって現場近くの川沿いを進んだ。雑木林に引っかかっている黒い袋の前に来たとき、数人の職員が川に入った。私はポケットからスマートフォンを取り出し、一部始終を録画した。黒い袋は水圧に押し潰されて、中身は入っていないように見えた。職員が雑木林にたどり着き、袋の中をのぞき込んだ時、団長が聞いた。 団長「中身、入っているか」職員「入っていませんね」 団長の表情が一瞬、ゆがんだ。袋に詰められていた除染廃棄物が川に流出したことが、ほぼ決定的になった瞬間だった。除染廃棄物が流出した事実を確認すると、団長は「いや、仮置き場には(未使用の)空袋もあったかもしれない。まだ確定ではありませんね」と回答を避けた。しかし、川岸に引き揚げられた袋には、仮置き場に置かれていたことを示す管理会社名と、「0.51㍃シーベル」という具体的な放射線量が白字で明記されていた。(三浦英之)
朝日新聞2020年1月22日夕刊5面:発生から5日遅れの「第一報」 フレコンバッグ(保管袋)に詰められた、原発事故の除染廃棄物が川に流出した疑いがあるー。昨年10月16日。福島県田村市の仮置き場付近で、環境省の調査団が中身の入っていない空のフレコンバッグを川の中から回収する様子を動画撮影した後、事実関係を確認するため、仮置き場を管理する田村市役所へと向かった。担当する生活環境課は大混乱だった。環境省や県の職員が慌ただしく出入りする部屋に入ろうとすると、前日までは親切に対応してくれていた担当者から「あなたの取材に応じられない」と大声で部屋を追い出された。幹部からは「市役所から出て下さい」と指示され、職員の1人からは「あなたの行為は風評被害を招きかねない」と非難された。理不尽な対応だと感じて、同課の前に椅子を置いて座った。幹部が出てきて「要求は何か」と尋ねられたので、「取材に応じるか、調査結果を可能な限り早く発表してほしい」と伝えた。調査結果は午後6時過ぎ、各社一斉に報道発表された。その直前、担当者が取材に応じた。「本日、川から回収したフレコンバッグは10袋。すべて空の状態でした」「中に詰められていた除染廃棄物は川に漏出した?」「はい。その通りです」「環境への影響は?」「仮置き場や下流の空間線量率、川の水の放射線濃度とも、いずれも問題ありません」 事実関係を確認した上で、環境省の調査団が川の中から空の袋を回収する動画をツイッターにアップした。再生回数は40万回を超えた。だが同時に「環境に影響がないなら問題ない」「風評被害を広げるな」といった意見や批判も多数寄せられた。 よく17日夜、環境省は、実は田村市だけではなく、県内の二本松市や川内村、飯館村の仮置き場からも流出が起きていたと報道発表した。総量は55袋。一部は除染廃棄物が外部に流れていた。なぜ発生から5日も遅れて「第一報」が発表されるのか。環境省や自治体の担当者に尋ねると、「確認に時間がかかわった」と口をそろえた。環境省では18日、小泉進次郎環境相(38)の会見が開かれた。TBSの金平茂紀キャスター(66)は、小泉氏が国会で「回収されたものは容器に破損はなく、環境への影響はない」と発言したことについて、「撤回すべきではないか」と詰め寄った。小泉氏は「回収した空袋については、ほかの工事現場などで使用されていた可能性もある。除染土壌の保管に使用していたものかどうかを含めて調査中」と苦しい言い訳に終始した。仮置き場の袋には、管理会社や放射線量が記されている。見れば、すぐにわかるはずだった。金平氏は取材にこう語った。「(フレコンバッグの流出を)隠したいのはわかる。被害は気の毒だし、大変だけれど、何もなかったみたいにするのはとんでもないことだ」(三浦英之)

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