1月22日 もっと知りたい 年金「3・4」

朝日新聞2020年1月16日夕刊9面:パートの厚生年金 対象どこまで? 少子高齢化で現役世代が減る中、社会保障などの支え手を増やそうと、政府は昨年末にまとめた社会保障制度の改革案に、厚生年金が適用されるパートらの範囲拡大を盛り込んだ。いま厚生年金に入れるのは、主に会社員らフルタイム働く人。パートなど短時間だけ働く人は、「従業員501人以上の企業で週20時間以上働き、月収8万円以上」といった要件を満たす場合に限られている。要件を満たさない非正規雇用などの人は、主に自営業者らが対象の国民年金に入っており、国民年金の加入者の約4割を占める。30代半ば~40代半ばの「就職氷河期世代」も多い。国民年金に入る場合、健康保険も国民健康保険になり、どちらも加入者本人が保険料を全額負担する。厚生労働省の試算では、保険料は合計で月1万9100円で、将来の年金は満額で月6万5千円だ。これに対し、厚生年金と被用者健康保険の保険料は労使折半で払う。月収8万8千円の場合、加入者本人が負担する保険料は合計で月1万2500円で、10年間加入すれば将来の年金は6万9600円。国民年金より少ない保険料で、多くの年金を受け取れる。厚労省は、厚生年金の対象者を広げることが無年金・低年金対策になるとして、今年の国会に改革法案を出す。具体的には、労働時間や月収の要件は変えないが、企業規模を2022年10月に「従業員101人以上」、24年10月に「51人以上」に広げる。厚生年金が適用されるパートらは現在、約44万人だが、この改革で約65万人増える見込みだ。また、保険料収入が増えるため、年金財政にもプラスになる。夫婦2人のモデル世帯が約30年後に受け取る年金額が、現役世代の平均収入の何割かを示す「所得代替率」は、代表的なケースでは今は50.8%と見込まれるが、51人以上に広げれば0.3㌽増の51.1%に上がるという。厚労省は当初、企業規模の要件そのものをなくすことを目指した。同省の有識者懇談会が「企業規模の違いで(パートらの)扱いが異なることは不合理」として、完全になくすべきだと提言したからだ。撤廃すれば、対象者が約125万人増え、所得代替率は0.5㌽上げられると見込んだ。ただ、厚労省の試算では、パート1人が厚生年金に移ると、雇う企業の保険料負担は健康保険と合わせて年約25万円増える。中小企業側は「経営に大きなインパクトを及ぼしかねない」と反発。いまは厚生年金に入る配偶者に扶養されているパートは自分で保険料を払わずに国民年金を受け取れるため、保険料負担を避けようと働き方を変えれば、人手不足が加速しかねないとも主張した。結局、選挙への影響などを心配する与党からも中小企業への配慮を求める声が高まり、企業規模の要件を撤廃せず、2段階で広げることで決着した。同じ働き方のパートでも、勤め先の企業規模によって年金が異なる、という課題は残ったままだ。(山本恭介)
朝日新聞2020年1月17日夕刊11面:受け取り開始時期 自分で選べるの? 政府は社会保障の「支え手」を増やすため、70歳まで働ける機会をつくるよう協業に努力義務を課す方針だ。セットで進めようとしているのが、年金を受け取り始める時期の選択肢の拡大。なるべく年金をもらわずに長く働き、引退後に受け取る毎月の年金額を多くしたいーそんな人生設計に応える狙いがある。いまは受給開始は原則65歳だが、60~70歳の間で選べる。66歳から1カ月遅らせるごとに年金月額は0.7%増え、70歳から受け取れば、年金月額は42%増える。65歳より早めると、1カ月ごとに、0.5%減る。改革案では、この選択肢を60~75歳に広げる。66歳以降に繰り下げた場合、月0.7%ずつ増える仕組みは変えないため、75歳から受け取れば85%増えることになる。一方、65歳より前に繰り上げた時の減額率は0.4%に縮小。60歳から受け取れば24%減る。繰り下げ受給や繰り上げ受給は、平均余命まで生きた時に受け取る年金総額がほぼ同じになるように、増減率や減額率が定められている。そのため受給開始を遅らせると、年金月額は増えても、早く亡くなれば総額は少なくなる可能性もある。66歳以降の繰り下げ受給を選ぶ人は、いまは年金受給者の約1%だけ。75歳まで広げても、どこまでニーズがあるかは不透明だ。就労促進を狙ったもう一つの改革案が、働いて一定の収入がある高齢者の厚生年金を減らす「在職老年金制度」の見直しだ。いまは、給与と年金の合計額が60~64歳は月28万円超、65歳以上は月47万円超の場合、超えたぶんの半額を厚生年金から差し引くなどしている。安倍政権は、昨年夏に閣議決定した「骨太の方針」で、高齢者の働く意欲をそそいでいるとして、将来的な廃止に言及した。厚労省は当初、減額の対象者を減らすため、減額基準を月62万円超に上げようとした。ただ、年金支給総額は大きく増え、年金財政は厳しくなる。65歳以上を62万円超にした場合、モデル世帯が約30年後に受け取る年金額が現役世代の平均収入に占める割合(所得代替率)は、0.2㌽下がって50.6%になった。与野党から「高所得者の年金を増やすため、将来の年金水準が下がるのはおかしい」などの批判が続出。この制度が働く意欲をそいでいるとのデータも、65歳以上についてはなかった。結局、65歳以上は月47万円超で据え置き、60~64歳だけを同じ47万円超に引き上げることで決着した。月収50万円の人の場合、いまは年金を月11万円減らされているが、見直し後は1万5千円で済むケースもある。この見直しで、年金減額の対象になる人は約67万人(在職受給権者の55%)かた約21万人(同17%)に減り、年間の年金支給総額は約3千億円増える。ただ、厚生年金の受給開始年齢は段階的に引き上げられており、60~64歳の対象者は男性は2025年度、女性は30年度からいなくなる。就労促進の効果は限定的だ。=おわり(山本恭介)

 

朝日新聞ASAの伸光堂西部販売 森林文化協会

ご予約・お問い合わせはお気軽に

Tel0120-740-276

〒352-0011 埼玉県新座市野火止8-14-29

ページトップへ戻る