1月21日 多難の国産ジェット「下」

朝日新聞2020年1月6日7面:甘いもくろみ失った受注 三菱航空機によるスペースジェット(旧MRJ)の開発が難航する理由には、安全性の証明を得る難しさもある。新たに設計された飛行機の安全性は、各国・地域の当局が型式証明でお墨付きを与える。日本では国土交通省が担当するが、ジェット旅客機についは三菱側と同様、国交省側も初めての経験だ。愛知県豊山町の三菱航空機本社の近くに70人を超える担当者が詰め、作業を進めている。審査項目は数百。飛行機事故が起こるたびに基準が増えてきた。「当局から指摘が一つあるたびに、機体全体の設計に波及し、100億円単位の出費になる世界だ」(関係者) 部品調達も難しい。航空機は部品にも認証が必要で、新規参入は簡単ではない。スペースジェットでは全体の7~8割の部品を海外から調達。その海外メーカーの主な納入先は米ボーイングや欧州エアバスだ。新参メーカーが部品調達を頼んでも、優先順位は低い。試験10号機の完成遅れも、海外からの部品納入の遅れが一因とされる。初号機納入が遅れるほど、事業環境は厳しさを増す。昨年10月、三菱航空機は米航空会社からの受注100機をキャンセルされた。背景には、ローカル路線を飛べる機体の座席数などを制限する米航空会社の労使協定がある。座席数の多い「スペースジェットM90」はこれに抵触。米航空会社からすれば、買っても運航できない機体だ。三菱側は規制が緩まるとみていたが、もくろみは外れた。座席数の少ない「M100」の開発が急がれるが、納入開始は早くても2023年以降。三菱航空機は今回キャンセルされた航空会社と「M100」の契約を結び直す考えだが不透明だ。三菱航空機は、スペースジェットと同種の航空機は今後20年、世界で5千機の需要が生まれると試算する。うち4割が米国市場。「M100」にライバルは不在で、発売できれば安定受注につながる。スペースジェット開発につぎ込まれた投資額は6千億円超とされる。三菱重工は昨春時点で、回収には「1500機くらい販売しないといけない」(小口正範副社長)としていたが、受注残は307機。今回の大型キャンセルで4分の1を失った。「M90」の定価は50億円前後。小型機は利幅が小さいうえ、新参メーカーの機体は当面大幅に値引きして売られることも多いといい、順調に利益を出すまで時間がかかる可能性がある。創業の地の長崎で造船所の売却を検討するなど、三菱重工の「稼ぐ力」が低迷しているのも不安要素だ。三菱航空機の水谷久和社長は年明け、同社の設立が12年前のねずみ年だったことに触れ、こう話した。「一回りもやってきたことには違いないが、やっと実や花をつける準備ができた」。悲願の「日の丸国産ジェット」の正念場は続く。(初見翔)

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