1月20日 サザエさんをさがして 

朝日新聞2020年1月18日be3面:30年ぶりに帰ってきた タイトルを決めた際の編集部の会議で、「少し寂しい感じね」と言われたことを覚えている。「サザエさんをさがして」漫画から題材を取った。”昭和探訪”がコンセプトだったから、提案したなかには、「サザエさん探訪」や「サザエさんを訪ねて」もあったと記憶している。それらと比べるか、確かに喪失感が強調されるような語感かもしれない。取り戻せるはずがない失われたものを探し求めているような。だが、そのときは語呂の良さから、多数決で「さがして」に決まった。2004年4月3日の連載開始からもうすぐ16年。記者は企画の立ち上げから関わってきた。今年1月30日、原作者の長谷川町子さん(1920~92)が生誕100年を迎えるのを前に、この連載についてふり返っておきたい。初回のテーマは「カラーテレビ」だった。それから「ゴミ収集」「お酒」「女性週刊誌」「ちゃぶ台」と、言い出しっぺの責任で続けて記事を書いた。「面白かった記事」を聴くbeモニターアンケートで、新連載の支持率ははじめから高く、胸をなでおろした。一方で、モニターの皆さんが書き込んだ記事への感想を読み、複雑な思いになった。「今みてもサザエさんは面白い」「今の漫画と比べると、サザエさんにはほっとする」「長谷川町子さんはすごい」・・。原稿ではなく漫画に対する称賛であふれていたのだ。「さすが」といえば、この欄の記事を書くためには、本当に「さがす」作業が多い。まずは6千本を超える漫画を読み込んで、「ネタ」をさがす。選んだ作品が新聞に載った日付を特定するため、縮刷版で漫画をさがす。テーマに合わた写真も、基本的にはデータベースでさがす。中でも一番大きな「さがす」は、サザエさんの時代を知る取材先をさがすことだ。連載が進むと、今のトピックに合わせて漫画をさがすという逆パターンも増えた。例えば自民党から民主党への政権交代直後には「総理大臣」をテーマにし、東日本大震災後には「関東大震災」や「地震学者」を取り上げる、といった具合だ。そうした「さがす」にも、「サザエさん」はよく応えてくれた。前者では、安倍、麻生、鳩山という平成の首相のおじいちゃんたちは、そろって昭和の首相として漫画に登場していたし、後者でも、関東大震災から半世紀後の1973年には、何度も「防災」をテーマにした作品が描かれた。今回の掲載作は、作者が43歳になる直前の一作。新聞連載の4コマ漫画で原作者が顔を出すことは珍しいが、「サザエさん」では十数回に及ぶ。楽屋オチといわれれば、その通りかもしれない。だが、寝ても覚めてもアイデアをひねり続ける生活のなかで、作者が登場する作品はSOSでもあったはずだ。実際、長谷川さんは病気でよく休んだ。四半世紀に及ぶ連載期間中、3カ月以上にわたって休載したことが計6回ある。74年2月23日、「筆者病気のためしばらく休みます」というおことわりが載った時も、当時の読者は「またか」と思ったはずだ。beの企画として「サザエさん」に読者が再会を果たすのは、それから30年後。長谷川さんが72歳で亡くなっていたことも合わせ、少し寂しい「さがして」ほどふさわしいタイトルはなかったと、今では確信している。(坂本哲史)*紙面にはサザエさんの4コマ漫画が掲載されています。 長谷川町子生誕100年記念の週刊朝日増刊『サザエさんと長谷川町子2020』(税込み430円)が発売されました。ご購入はASAまでご連絡を。

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