1月18日てんでんこ 奥尻から【14】

朝日新聞2018年1月12日3面:島を訪れ、地震を肌で感じる高校生たち。机上ではわからない脅威を実感する。 昨年10月、北海道奥尻町に緊急サイレンが鳴り響いた。「南西沖で地震発生。ただちに避難してください」。防災無線の呼びかけに、函館ラ・サール高校(函館市)の生徒たちが緊張した面持ちで避難を始めた。
1年生151人が体験した避難訓練だ。どこに逃げるか知らされず、地図を頼りに避難所を目指す。最大の特徴は「防災ロールプレイ」だ。かが人、ペット連れ、妊婦‥。避難所の受付係は、錯綜する情報から避難者名簿を作成し、不明者の確認もした。様々な立場を演じることで災害時の的確な対応を学び、判断力や解決力を養う。仮設トイレや寝床の設営、炊き出しにも挑戦した。函館ラ・サールは東日本大震災の前年から毎年、1年生全員が奥尻島へ研修旅行に行く。「あの地震を肌で感じることで災害時の身の処し方を学んでほしい。島での体験は貴重な糧になるはず」。引率教論の井上誠(41)は奥尻行きの意義をこう話す。
1993年の北海道南西沖地震で甚大な被害を受けた奥尻。わずか5年で復興宣言をしたものの、四半世紀たって風化は否めない。後世にどう伝えるのか。町がアピールするのが、教育旅行を受け入れる「学びの島」だ。ありがちな被災地見学ツアーとは異なり、町民や役場、消防、警察も参加して「島ぐるみ」で本番さながらの避難訓練を演出する。2005年に初めて東京の都立高校の生徒が訪れた。徐々に浸透し、12年には「防災推進プロジェクト」を打ち出した。私立の開成高校(東京都荒川区)も15年6月、2年生が修学旅行で奥尻を訪れた。旅先は生徒自ら決める伝統で、北海道内5コースのうち80人が奥尻コースを選んだ。
奥尻町の青苗地区で崖の上の津波到達点を見上げた生徒たちは、机上ではわからない津波の脅威を実感した。「現地に立ち、そこで何か感じるかが大切だ」と引率教論の吉野修司(47)は話す。地理を教える吉野は、海岸段丘や避難所などを指しながら、地形によって津波対策も変わることを生徒に解説した。
島民と交流した夏博正(かひろまさ)(19)は「災害を語り継ぐには、何が起きたのかを知るだけでなく、被災者がどう感じたのか、その『感情記憶』こそつないでいくべきだ」と感じた。いま都内の大学医学部に通う。離島の医療事情にも関心が強まったという。(阿部浩明)

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