1月16日 多難の国産ジェット「上」

朝日新聞2020年1月14日4面:遅れに遅れた開発作業 名古屋市中心部から車で北へ30分。愛知県名古屋空港(愛知県豊山町)のロータリー脇にある、「MRJ」と書かれた建屋が目に入る。三菱重工グループの国産初のジェット旅客機「スペースジェット」(旧MRJ)の最終組立て工場だ。6日午後11時、その巨大な壁が開き始めた。作業車に引かれて中から現れたのは「10号機」と呼ばれる最新の試験機だ。10人ほどの作業員らに見守られながら、約30分かけて空港の敷地内へ運び込まれた。10号機は、900以上の設計を変更して完成した。三菱重工傘下でかいはつを担う三菱航空機の水谷久和社長は「非常に大きな一歩。開発作業が大詰めの中の大詰めにさしかかった」と胸を張った。これまで開発作業は遅れに遅れた。当初2013年だった航空会社への初号機納入は5度延期。20年半ばとする現在の目標についても、6度目となる延期がささやかれる。水谷氏は10号機について昨春、19年6月までに完成させる考えを示していた。だがこれも半年以上遅れてしまった。時間がかかったのが配線の見直しだ。一部にトラブルが起きた場合でも操縦を続けられるようルートを分散させる。内部に張り巡らされた配線は全部で3万本近く。年末年始も大みそかと元日を除き24時間態勢で、1本1本正しく接続されているか確認する作業を続けて完成にこぎつけた。スペースジェットの今後の納入延期を大きく左右するのが、この10号機だ。スペースジェットが実際に客を乗せて空を飛ぶためには、「型式証明(TC)」と呼ばれる機体の安全性に対する当局からのお墨付きを得る必要がある。昨年3月には、従来の書類審査に加え、実機を使った飛行試験を米国で始めた。飛行試験に投入している4機は、いずれも設計変更前の古い機体。設計変更に関係ない項目から試験を始めているが、最新の10号機を投入しないと試験は終わらない。10号機は現在、地上で性能を試験中だ。今後、国内での飛行試験を経てすみやかに米国の試験に持ち込むというが、納入開始までには時間がない。スケジュールについて三菱重工の泉沢清次社長は「精査している」と述べ、再延期の可能性に含みを持たせている。もともと「20年半ば」という時期はあいまいだ。関係者によると、当初は20年7月の東京五輪開幕に間に合わせる方針だったが、すでに諦めたというのが共通認識という。三菱重工内部からは「いつまでが『半ば』と言えるか」と、遅れたときの言い訳を考えているかのような声も漏れる。 ◇国産初のジェット旅客機「スペースジェット」の開発が難航している。なぜ視界不良が続くのか。3回の連載で探る。(初見翔)

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