1月15日てんでんこ 奥尻から【12】

朝日新聞2018年1月10日3面:自然や地域に触れる。離島の高校に島外から生徒が入学してきた。 北海道の最北端に位置する稚内出身の俵谷俊彦(52)が、離島にある奥尻高校の教頭に赴任したのは2015年9月だった。道立から町立への移管は半年後に迫っていた。でも青写真はなかった。
むしろ聞こえてきたのは、島民の不満だ。島民が高校を訪ねてくることも、高校が島の行事にかかわることもめったにない。教員は若者が多く、約4年で去る。島の高校と言いながら、地域になじみがなかった。俵谷は、同じ日本海の離島だが、全国から生徒を集める島根県隠岐島前高校を訪ねた。公立学習塾や外部講師の米国総領事、低額の寮といった工夫のほか、地域の課題を地元の人と一緒に考える授業までしていた。小さな島だからこそ問題が見えやすく、それがまた教材になる、というのだ。
「奥尻だってできる」。町立化とともに校長になった俵谷は、島全体を学舎とする「まなびじま奥尻プロジェクト」を掲げた。総合的な学習の体験授業ではスキューバダイビングで奥尻の自然に親しみ、「奥尻パブリシティ」で生徒が町おこし政策を考え町長に発表。島内の大人を招く「町おこしワークショップ」では民宿やワイン製造業者らに課題を話してもらい、一緒に打開策を考えた。
ITも活用する。フェイスブックで大学生ボランティアを募集し、京大、名古屋大、慶応大の計5人にインターネット電話で個別指導してもらう「WiFiニーネー(兄姉)」を始めた。昨秋は部活動の遠征費を補助するお金もネットのクラウドファンディングで募り、182人から158万円を集めた。
挑戦は話題になり、17年春、島外からの生徒を募集したら、5人が入学した。俵谷が島内の民宿を一軒一軒回り、下宿を探した。この「島留学」の生徒の一人で、道東から来た加藤広大(16)は中学時代、学校嫌いだったが、入学後はトロンボーンを始め、いまは吹奏楽部の部長だ。「料理がおいしい」と屈託がない。18年春入学の説明会は道外の青森、仙台、東京、静岡でも開き、九州からも含めて30人以上が参加した。
ただ、17年春に留学してきた5人のうち2人は転校や退学をした。さらに17年春に島の中学を卒業した22人のうち奥尻高に進んだのは10人。18年春は17人中、1桁にとどまりそうだ。町立高校の試行錯誤は続く。(宋潤敏)

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