1月13日 「嫁」もういやだ縁切った

朝日新聞2018年1月8日25面:苦しんだ30年「死後離婚」届け出 結婚は「家に入る」ことではないのに、そんな意識に基づく習慣は今も残っています。呪縛から自由になるともがいた女性たちの話です。 岩手県内に住む女性(55)は30年ほど前、実家が専業農家の男性と結婚した。夫の両親は同居して農業を手伝うことを望んだが、勤めを辞めたくない夫は「こいつが同居をいやがっている」と断った。不満の矛先は自分に向かった。夫の両親は「使えない嫁だ」と言い捨てた。
夫の実家では、夫と義父の前に炊きたてのご飯、女性と義母には残り物の冷たいご飯がよそわれた。「母親が冷や飯を食べているのに、なんとも思わないの」と夫に尋ねると「なんでだ?」と返ってきた。入浴は義母に続いて女性が最後で、風呂掃除もセット。「『嫁』は家で序列が一番下」と分かった。夫からは「所有物」のように扱われた。子どもが小学生になったのを機にパートに出ようとすると、「男のいない職場にしろ」と言われた。化粧やスカートは禁止。具合が悪くて寝込んでいると、「飯はどうするんだよ?」。
離婚を考えて母親に相談すると、子供のことを理由に「死んだつもりで我慢するしかない」とつれないかった。3年前、夫が事故で亡くなり、墓を建てた。死んでからも夫と一緒にいたくはないので、自分は樹木葬にしたい。でも、子どもにとって親の墓が二つになるのは「迷惑」だと思い、あきらめて同じ墓に入ると決めた。ただせめて、墓石に「家」の文字は彫らないことにした。「家という文字は、女をつけると嫁になる。絶対にいやだった」
墓を建てたひと月後、役所に電話をかけた。「姻族関係終了届の用紙はありますか」。その1週間後に戸籍謄本と免許証、印鑑を持参して役所を訪ね、用紙に必要事項を記入して手続きは終わった。姻族関係終了届は配偶者の死後、その血族との縁を切るための届け出で、「死後離婚」とも呼ばれる。2016年度には全国で4032件が届けられた。
この10年間で、2.2倍に増えている。「あんなに苦しめられたのに、こんなに簡単に」。やっと縁が切れた瞬間は、意外にもあっけなかった。
「3世代同居 かえって亀裂」 「お母さんと別居しないなら、子どもを連れてアパートに出ていくから」。新潟県の女性(35)は昨夏、夫に訴えた。これまで別居の相談に「簡単なことじゃない」と渋っていた夫が、初めて「分かった」と応じた。父は長男で、女性は祖父母と3世代が同居する家で育った。新潟県内でも農家が多い地域で、友達の多くも3世代同居をしていた。5年前に結婚した夫も長男。当然のように夫の実家に移り住んだ。「財布」は義母が管理し、女性にはお小遣いが渡された。無駄遣いと思われそうで、買い物袋を提げて帰るのも気兼ねした。昔の教育書をひっぱり出して説教されることも苦痛だった。
家にいたくなくて子どもを連れて子育て広場に行った。行く先々で同じように「放浪」する同志に会った。ある日、インターネットで「3世代同居は小数派」という記述を見つけた。周囲には3世代同居が多いが、全国平均で見ると1割にも満たない。「別居」という選択肢があったことに気づいた。日本家族社会学が09年に実施した全国家族調査によると、30~50歳の既婚女性のうち義母との関係が「良好」と答えたのは全体の43%で、同居に限ると38%に下がる。14年の内閣府の意識調査では、夫の親との3世代同居を望む女性は14%にとどまる。
ただ、政府は3世代同居を「家族の支え合いにより子育てしやすい環境」とし、16年度から予算や減税で後押しする。女性には怒りがこみ上げる。実母と祖母も子育てを巡ってぶつかり、女性は板挟みになった。子どもには同じ思いをさせたくない。昨年秋からパートを始めた。夫の母との同居解消に必要なお金をためるためだ。「一緒に住んでさえいなければ、いい関係だったかもしれない。同居は家族の絆を強くするどころか、亀裂を生むものではないでしょうか」(田中聡子)

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