私たちも 投票します

朝日新聞4月10日2面:6月から選挙権を得るAKB48の3人が初の投票に向けて、政治や民主主義について考える連載「私たちも投票します」は今回から第3部に入ります。このシリーズでは、憲法学者の木村草太さんと、選挙制度や選挙運動の仕組みについて話し合います。初回は、国会と内閣の関係や衆議院と参議院の違いがテーマです。
木村草太 今回は国会の仕組みから考え知きましょう日本には衆議院と参議院という二つの議会がありますが、ちょっと役割が違います。ポイントは衆院がいくつかの権限で「優越」していることです。特に国会議員の中から首相を選ぶ時は、参院の投票結果より衆院での投票が優先されます。このため衆院でより多くの議席をとることが、政党にとって重要になります。
向井地美音 参院にはどんな役割があるんでしょうか?
木村 衆院議員の任期は4年、参院議員は6年。しかも衆院は首相の権限で「解散」できる制度になっているで、身分は不安定です。衆院議員の方が大臣など政府のポストに就く機会が多いですが、参院議員は任期が決まっているので、じっくり落ち着いて政治に取り組める。長期的な視点でものを見て、議論できる面がありますね。
加藤玲奈 任期が違うなら、衆院と参院では選挙も別々にやるんですか。
木村 参院は3年ごとに議員の半数を選挙で選び直すので、普通は衆院の選挙と日程は重なりません。通常は、衆院選でも最も多く議席を取ったグルプ=与党から首相が選ばれます。このため、次に行われる衆院選は首相や与党にとって、政治をうまく行っているかを国民に評価してもらう「中間テスト」のような意味を持ちます。
茂木忍 学生で言えば、参院選は中間テストのようなものだと?
木村 その時の政治に不満があれば、国民は選挙で懲らしめるので、参院選は与党に不利な結果がでやすいと言われています。もし衆院選と参院選を同時にやると、どうなるでしょう。首相の成績が決まる期末テストと一緒に行うことになり、中間テストの意味がなくなります。1986年には、「衆参同日選挙」がありました。当時の朝日新聞の記事を見てみましょう。
加藤 86年6月2日夕刊ですね。見出しに「衆院、異例の冒頭解散」と書かれています。
木村 当時首相だった中曽根康弘さんは国会を開いて、その初日に衆院の解散を決めました。首相が解散を決めたら、すぐに選挙を行うのがルールです。衆院選は翌7月、参院議員の任期満了に合わせて予定されていた参院選と同じ日に行われました。
向井地 結果は中曽根さん率いる自民党が圧勝したんですね。
木村 当時の紙面を見ると、「再興の300議席」とあります。これまでの衆院選で、自民党が単独で300議席を取ったのはこの時だけです。参院選での自民の獲得議席は72で、これもかなり勝った。衆参の同日選は選挙運動が盛り上がって、投票率が上がる傾向があります。当時の記事を見ると、中曽根さんが参院選だけで戦うより同日選の方が有利になると考え、解散したという見方が書かれています。実際、その通りの結果になりました。
木村 首相は自分の判断で、衆院を解散して選挙ができる。もし首相が「今選挙すれば、自分や与党に有利だから解散します」と言ったら、どう思いますか?
茂木 それはさすがに、自分勝手な考えじゃないかなと思います。
木村 そうですね。だから、度の首相も解散する時は、もっともな理由を言います。中曽根さんも、解散する理由をつけていました。当時の記事を見ると「違憲解消を目的 政府声明」とあります。 当時、衆院は「一票の格差」が、憲法に違反していると最高裁に指摘されていました。一票の格差については次回に詳しく話し合いますが、中曽根さんは、有権者の一票の重みが地域によって違う状態を解消することを解散の理由にしたわけです。
向井地 首相がそんな理由でいつ解散するのか、国会に相談しないで決めてもいいんですか。
木村 厳密に言うと、衆院を解散する権限は、首相が率いる内閣にあります。内閣のメンバーである大臣が1人でも反対すれば、解散できません。でも首相は大臣を辞めさせることができるので、反対する大臣をクビにして解散することもできます。
向井地 ちょっと怖い話ですね。
木村 向井地さんが解散の理由について気になったのは、首相が自分に有利なタイミングで選挙を打つことに、違和感を覚えたからですか?
向井地 そうですね。首相の力を使って、そういうことをしてもいいのかなって。
加藤 選挙のタイミングと言えば、AKB48の総選挙もいつやるかは大切です。もし自分でタイミングを選べるなら、仕事が順調で元気にアピールできる時にあった方がいいと考えるでしょうね。
木村 衆院の解散は本来、どんな時にやるべきものだと思いますか?
向井地 国会がうまく回らなくなったとき。
木村 国会がうまく回らないって、どういう状況なんでしょう?
茂木 国会議員がきちんと動かなくなった時とかでしょうか。
木村 例えば、AKB48の中でダンスの振り付けを考える時、誰かが提案するとします。ところが、その案にはみんなが反対して、結局、決められないまま公演の当日を迎えたら?
茂木 振り付けが決まっていなかったら、大変なことになってしまいます。
木村 国の政治も同じです。首相が「ぜひこれをやりたい」と政策を提案したのに、国会が「だめだ」と反対し続ければ、いつまでたっても決まらない。国会の中での多数派と首相の意思が違う時は、参院を解散し、どちらがいいのか選挙で国民に判断してもらった方がいい。それが解散することの意義です。(構成・小林豪)

2016/ 4/10 15:07

2016/ 4/10 15:07

 

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