独居の在宅ケア 地域力で支える

朝日新聞2月28日11面:在宅ホスピスに取り組む医師 川越厚さん
がん患者の場合、8割以上の方が「痛み」と「呼吸のしづらさ」で苦しむと言われています。苦しみ方は「歯が痛い」なんてものではありません。だから、モルヒネなどの麻薬を用いて苦しみをしっかり緩和する治療が最後まで絶対に必要です。緩和をきちんと行えば、がん患者でも家で普通に過ごせます。がん以外の病気では、緩和すべき症状があまりないので、介護支援が重要となります。 最後まで自宅で過ごすためには、看護師を含めた緩和医療の専門チームが24時間きちんと対応するシステムが不可欠です。残念ながら、このようなチームは全国で見ればまだ十分とは言い難いです。 一方、頼れる家族がなく、独居で末期がんとなる人は近年増えています。私のところでも、独居患者の割合は最近2割を超えています。また、高齢の夫婦2人暮らしは独居予備群です。家族の介護力を期待できない中で在宅ケアをどう推し進めるかが、深刻な問題となっています。 一人暮らしの場合、医療保険と会議保険だけでは、どうしても支援の隙間ができてしまいます。国や自治体にできることは限られているのです。経済力がある人は自費でその隙間を埋めれますが、多くの方はその余裕がありません。この問題はこれからの大きな課題です。 私が考えている一つの答えは「地域力」をうまく引き出すこと。我々のところではボランティアがいますが、独居の場合にはそれ以外に配食サービスの人など、日頃、患者さんの所へ顔を出す人たちにも協力してもらっています。持てる地域力をどうしていくかを考えることは現実的な解決法です。地域力をうまく動員すれば、独居の方の在宅死も不可能ではありません。私の今までの経験から手ごたえを感じています。 人生には「生老病死」の苦しみが必ずあります。「苦」とは思うようにならないこと。それにあらがう生き方もありますが、どこかで向き合わなければなりません。今、現場での患者さんたちの「苦」は深刻です。平均寿命が延びるはよいのですが、当然来るべき「お迎え」がなかなか来ないことで多くのお年寄り家族が苦しんでいます。生きるがゆえに苦しむ人がいる現実を直視し、そのために私たちは何ができるかを考えることも大事です。 医療は今も昔も、人の死や病を否定しようとします。アンチエイジングの試みや再生医療などを頭から否定するものではありませんが、どういう人にそのような医療を適用すべきか、厳しく問われる時代になりました。たしかに命はみんな平等に貴いものです。しかし、やはり90代には90代の命があり、40代には40代の命があります。命に対する哲学、その哲学に基づいた医療が今ほど問われている時はないでしょう。

朝日新聞ASAの伸光堂西部販売 森林文化協会

ご予約・お問い合わせはお気軽に

Tel0120-740-276

〒352-0011 埼玉県新座市野火止8-14-29

ページトップへ戻る