池上彰の新聞ななめ読み 新聞社の姿勢がわかる

朝日新聞3月25日17面:教科書検定の結果をどう報じるか。文部科学省担当記者あるいは教育問題担当記者が、毎回知恵を絞るところです。場合によっては、頭を痛める問題かもしれません。このニュースの伝え方で、その記者あるいは新聞社の姿勢や支店が明らかになってしまうからです。
今月19日、新聞各紙は朝刊で2017年度から使われる高校教科書の検定結果を報じました。朝日新聞は冒頭で<高校教科書の検定に計270冊が合格したと、文部科学省が18日公表した>と書いています。 これでは合格しなかった教科書があるのか、はっきりしません。
これでは合格しなかった教科書があるのか、はっきりしません。毎日新聞を見ることにしましょう。朝日が1面トップの扱いなのに対して、こちらは1面の真ん中あたり。独自の記事が1面トップを占めているとはいえ、扱いの小ささが気になります。ここには<教科書検定は小・中学校、高校の学年ごとにほぼ4年に1度実施される。今回の申請は全10教科で244点で、242点は合格した>と書かれています。朝日の記事に比べて、小学校や中学校の検定にも触れ、全体像が分かります。読者に親切です。それにしても朝日の「計270冊」とは、どう違うのか。気になるので、朝日の他のページを見ると、30面の「教育」ページに<合格した242点のうち…>という箇所がありました。「冊」と「点」とは、どう違うのでしょうか。同じ新聞のページによって数字が異なるのは読者を迷わせています。
毎日の記事を読むと、どうやら2点は合格しなかったようです。どうして合格しなかったのか。読売新聞を見ましょう。
読売も朝日と同じく1面トップの扱いです。こちらには<今回の検定は26社から244点の申請があり、内容などに6601件の検定意見が付いたが、修正のうえ、取り下げられた2点を除く242点が合格した>と書いてあります。 2点は不合格ではなく、途中で取り下げられたようです。なぜ取り下げられたのか。ますます気になりますが、3紙を読む限りでは疑問が解消しません。 ところが産経新聞を見ると、出版社が「編集方針の変更」で取り下げたことがわかります。かゆいところに手が届くきじというのは、こうゆうことを言うのでしょう。
朝日の記事の基調は<戦後補償や領土、集団的自衛権などに関する記述を中心に、政府の主張が反映されていた>というものです。教科書検定は、内容にな違いがないか文科省がチェックするものですが<過度に内容を縛ってしまうと、子どもの幅広い学びの可能性を損ないかねない>と記者が指摘しています。 一方、毎日は<『地理歴史』『公民』を巡って、安倍晋三政権が注力した集団的自衛権の行使容認など安全保障に関する記述や、領土に関する表現に対する検定意見が目立ち「安倍カラー」が強くにじむ結果となった>と指摘しています。
読売は、東日本大震災の記述が各教科取り上げられたことを重点的の記述しています。さらに「慰安婦」に関しての記述が見直されたことや竹島と尖閣諸島に関して、<記述内容の充実が目立ち>と書いています。検定結果を評価している事が読み取れます。
産経の記事には、驚いたこともあります。1面トップで、この4月から中学校で使用される歴史教科書について、唯一、慰安婦に関する記述を採用した教科書が<最難関校と呼ばれる学校を含め、少なくとも30以上の国立、私立中で採択されていたことが18日、分かった>と書いていることです。高校の教科書検定に関する記事より大きな扱いです。
4月から使用される中学校の教科書は、既に文科省の検定を通っています。検定を通った教科書を使うことが、どうして大きな扱いの記事になるのでしょうか。
産経新聞社が所属するフジサンケイグループには、中学校の歴史教科書を発行している出版社があります。そのライバルに当たる教科書出版社の教科書採択を批判的に報道する。これでは、報道の意図を勘繰られかねませんよ。
高校教科書の検定結果を報じる各新聞紙。見出しを見ると、朝日は「集団的自衛権」「慰安婦」、読売は「震災」「復興」、毎日は「竹島・尖閣」に焦点をあてていることがわかる。

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