患者を生きる 3千回記念【3】

朝日新聞3月3日30面:山形県米沢市の情野利紀(せいのとしのり)さんは2005年10月、工場での夜勤中に倒れた。画像診断の結果、左右両側の大脳に出血がみられた。妻の真弓さんは主治医から「今夜が峠」と告げられた。緊急手術で命は取り留めたものの、右半身のまひや失語症などの障害が残った。利紀さんは病院で毎日、リハビリに取り組んでいる。(06年10月11日~15日連載)
脳出血から10年以上が経った。利紀さんは退院後に米沢市内の介護老人保健施設に入り、現在も施設でリハビリに励んでいる。退院時に戻る選択もあったが、家計を支える真弓さんの働く時間を確保するために入所した。 普段は車いすで移動する。週3~4回の歩行訓練では、平行棒のような手すりを両手でつかみながらゆっくりと歩く。
「ここまで回復した。ありがたいという言葉しかありません」。真弓さんは話す。10年9月には全身がまひする発作を起こした。軟らかくて小さく刻んだ食事でもむせるようになり、入院先の病院から「窒息事故を起こす可能性がある」と言われた。その年の11月に胃ろうの手術を受けた。 毎週日曜日、真弓さんが自宅から約30分かけて施設に面会に来てくれる。最近までほぼ毎日だったが、利紀さんは「毎日来ることはないよ」と筆談で伝えた。 真弓さんは、カーテンやふとんを製造販売する会社で働いている。利紀さんが倒れた当時はパート事務員だったが、その後、正社員になった。当時小学生だった一人娘の薫さんは高校生に。 いま、利紀さんはコーヒーを飲むのが一番の楽しみという。コーヒーは以前からの好物。「のみ込みのリハビリ」のためとして、真弓さんにさまざまな缶コーヒーやレギュラーコーヒーを買って来てもらっている。 コーヒータイムは毎日午後に1回。とろみ剤を入れたコーヒーを少し自由のきく左手に持ったスプーンですくう。カップ1杯分を一口ずつ、ゆっくりと飲み干す。コーヒーがうまく飲めるようになれば、次は軟らかな食べ物に挑戦していくつもりだ。

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