心のケア【3】

朝日新聞2月18日30面:2009年に夫(当時60)を失った半年後に大腸がんが見つかった埼玉県の女性(61)は15年3月、定期検査で肺とその周辺のリンパ節に、転移とみられる腫瘍が見つかった。 「腫瘍の数が多く、もう手術はできません。2週間に1回のペースで抗がん剤治療をします」女性は06年に乳がんになった後、大腸、副腎にもがんが見つかったが、いずれも手術で摘出できた。抗がん剤による治療しかないという説明に、女性は戸惑った。「抗がん剤は何回しますか?」そうたずねると、医師から思わぬ答えが返ってきた。 「うーん。ずっとですね」 そう告げられた瞬間、えたいの知れない黒い影が、近づいてくる気配を感じた。 「人生のカウントダウンが始まった。私の人生は終わる…」逃れようのない恐怖感の中で「精神腫瘍科を受診させてください」と自ら願い出た。 4月上旬、埼玉医科大学国際医療センター精神腫瘍科教授の大西秀樹さん(55)を5年ぶりに受診した。転移を告げられてから、マンションの窓から夕陽が沈むのを見るたびに、激しい不安に押しつぶされそうになていった。
「手術もできず、もう先がないのではないか、とばかり考えてしまいます」と訴えた。 大西さんは電子カルテで女性の病状を確認した後、不眠や食欲不振など、うつ症状がないかどうかを確かめた。「今後の病状に対する不安感があり、一人暮らしも不安を強めている」と診断した。女性には3人の娘がいたが、独立して子育てや仕事に忙しく、心配させたくないという思いも強かった。「治療を続けるために、お子さんたちに、頼れるところは頼りましょう」と声をかけた。 精神腫瘍科は不安やうつ症状が強い場合、抗不安薬や抗うつ薬などの薬物治療をすることもある。 大西さんは「不安な気持ちを軽くする薬を出すこともできますよ」と説明してくれた。女性は「この苦しみに効く薬があるんだ」と思うだけで、ほっとした。診察が終わる頃、大にさんは女性に「患者さんたちが集まって話す集団精神療法に来てみませんか」と提案した。
乳がんになった2006年に始めた10年日記帳、肺に転移が見つかった日から、書くのをやめた。
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