心のケア【1】

朝日新聞2月16日33面:埼玉県に住む女性(61)は2005年末、右の胸に、えくぼのようなへこみを見つけた。 嫌な予感がした。 「まさか、がん? 治療に何百万円もかかるのかな。でも、我が家にそんな余裕はないし・・・」 3人の子どものうち、末娘はまだ高校生。学費がかかることを考え、受診をためらった。 しばらくすると、右の乳房から乳汁のようなものが出るようになり、埼玉医科大学病院(埼玉県毛呂山町)を受診。右の乳房に針を刺して細胞を調べる検査を受けた。見つかったのは5センチほどのがん。06年1月、乳房の全摘手術を受けた後、抗がん剤治療をした。 副作用で髪が抜け、吐き気にも悩まされた。だが、悲観せずに過ごせた。いつも明るく振る舞ってくれる夫の存在が大きかった。 女性が風呂上がりにウィッグをつけづにいると、夫は「お、三蔵法師みたいだな。おがんじゃぇ」とおどけてみせた。 大手電機会社で働く夫は連日深夜に帰宅したが、休みのたびにドライブに誘ってくれた。疲れを気遣うと「お母さんと車に乗って話すのが、ストレス解消なんだ」と言った。ある時、夫は2匹の猫がか描かれたはがきを買った。「黒い方が俺で、三毛がお母さんだ」と笑った。 その後は再発の兆候もなく、経過は順調だった。手術から3年過ぎた09年には3ヵ月ごとに受診して年に1回検査するだけだった。 7月下旬のある朝、女性はいつものように夫を車で駅まで送った。家に戻り一息ついた時だった。 電話が鳴った。「ご主人が、電車の中で倒れました。すぐに病院に来てください」搬送先の埼玉医科大学国際医療センター(埼玉県日高市)に着くと、夫は胸に電気ショックの治療を受けていた。「すでに、脳死状態です」ピーッという音とともに、画面の波形がまっすぐになった。 心疾患による突然死。気がつくと、横たわって動かない夫(当時60)と2人、霊安室にいた。 「お父さん、ついさっき、『行ってきます』っていってくれたのに」数か月後、女性は再びがんと向き合うことになり。*5回連載します。

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