市民マラソンをたどって

朝日新聞3月21日(夕刊)2面:東京・原宿近くの陸橋の上だった。2007年2月。東京マラソンの初開催が迫ったある日、日本陸上競技連盟幹部から抗議された。「朝日の東京マラソンの記事は何だ!批判的なものばかりで」。初めて都心を長時間封鎖して実施するマラソン大会に対し、朝日新聞は当時、様々な影響について書いていた。 日本陸連幹部にも、3万人が走る大会がどんなものか、不安があったと思う。あれから10年。東京マラソンはより巨大化し、ランニングはより身近になった。この大会は日本人の、どちらかと言えば苦手な分野に光をあてた。 10万円以上を寄付して走るチャリティーランナー制度がある。寄付先を指定でき、今年は13事業が対象となった。 「10万円を払って出走権を買うのか」と揶揄する声もあったが、応募を開始した11年には707人だった応募が今年初めて定員いっぱいの3千人に達した。つまり、これだけで寄付額は3億円。ロンドン・マラソンの約87億円とは比較にならないが、走ることとチャリティーが結びついてきた。
滋賀県湖南市の高島美紀子さん(51)は、05年まで福島県楢葉町に住んでいた。東日本大震災による原発事故の影響でまだ町に戻れない知り合いがいる。「苦しんでいる仲間に何か形を残したい。微力だれど力になれる」と、今年は東日本大震災復興支援事業を寄付先にして走った。
ボランティアも1万人規模。最後のランナーが戻ってくるまで声をかけ続けていた。20年東京五輪を目指し、「今から慣れておきたい」と話す通訳担当者がいた。 第1回大会から企画の≪仕掛け人≫である早野忠昭レースディレクター(57)は「走る人はもちろん、ボランティアや応援者にも真っ白なカンバスを提供し、自分色で描いてもらう。そんな事を10年間考えてきました」。
16億円ほどで始まった運営費は今年は30億円を超えたという。スポンサーからの協賛金も20億円に。今年も第一生命は東京マラソンを含めて全国15の市民マラソン大会をサポートする体系的な取り組みを始めた。 東京マラソンのそんな盛況を横目に、筆者が運営に携わっていた横浜国際女子マラソンは14年を最後に幕を閉じた。端的に言えば赤字が理由だ。参加資格タイムの厳しい、いわゆるエリート大会は、五輪などでの男女マラソンの成績が下降線をたどるとともに苦境に立っている。
今年1月、福士加代子選手(ワコール)が優勝した大阪国際女子マラソンだが、視聴率は9.6%(関東地区、ビデオリサーチ調べ)と苦戦した。視聴率の低迷はスポンサー離れに直結しかねない。参加資格記録が3時間13分以内と厳しく、500人規模の大会。それでも大会に携わって20年になる吉田勝彦チーフプロデューサーは「35年間続いている歴史も踏まえ、今後もいつかは大阪国際を走りたい、と目標になる競技性の高い大会を続けていく」と話している。(堀川貴弘)

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