又吉直樹さん「私と新聞」

東京新聞4月2日9面:若い頃から、同世代で新聞をしっかり読んでいる人たちに対してはなぜか、憧れじゃないけれど、うらやましさみたいのありましたね。 芸人になるために上京し、仕事もないような時期に、雑誌とかみていると、有名な大学の学生モデルさんのプロフィールみたいのが載っていて、項目の一つで「読んでいる新聞」も書いてあるんです。勉強もスポーツも恋愛も、僕よりはるかに充実している人間が、ちぁんと新聞も読んでんやねっていう。そこから「大学行って朝新聞を読む暮らししてみたかったなぁ」なんて思うようになった。
だから今は新聞、読みますし、相方(ピース綾部祐二)にもすごい勧めてるんですよ。「もんまにMC(司会者)目指すなら新聞とか読んだ方がいいで」って最近も言ったんです。でも相方文字読めないんですよ(笑)。それは冗談にしても、僕とのコンビちしても相方には新聞を読んでもらいたいですね。
コンビの役割としてボケ役の僕の方は変なことを言いたいんですよ。僕が斜めから言った変な意見を相方にはぶっ壊してほしいんです。「それは違う。なぜならこうだから」って。でも、僕が言った変なことが勝っちゃうとダメでしょ(笑)。新聞を読んでいれば、なぜ僕の言う変なことが「違う」のか、説得力のある鋭いぶっ壊し方ができると思うんです。
僕のネタの作り方だと、そんなに時事を盛り込むていうことはないんですけど、今世の中でどんなことが話題になっているのかというのはある程度頭に入ってないとできないですよね。こっちが意図しなくても、僕たちが用意したネタの設定が、例えば大きな事故が起こったことをすぐに想像してしまうネタだった場合に、舞台に立つ芸人がそれを知らないってことはまずい。だから、もちろん劇場には新聞はありますし、世の中で起きていることをしるということはたぶん最低限やってることだと思います。
誰でも日常生活のなかでは自分の興味あることばかりに気が行きますよね。だから僕が新聞を作ったらすごく偏った新聞になります。文学やお笑いやったり、洋服のことばかりの新聞。それはそれでいいと思うんですよ。ただ、もっと世の中全体の興味であったり、社会共通の重要なことっていうものは皆が共有しないといけませんよね。それを新聞が坦ってくれていると思うんです。
もちろん自分が好きな趣味とかそうゆうものについて考える時間は置いておきたいんですけど、じゃ自分の思考とか視点をまるっきり変えて、政治とか経済とか事件とか、その一つ一つに自分がどう考えていくのかっていうふうに考えようとしたら、やっぱり新聞を活用する。新聞を自分の生活のもう一つの軸にする、それだけで世界が広がると思うんです。
社会的に大きな事件、事故、出来事が起きたとき、他人の口から自分の耳にニュースが入って来る場合、その人の言葉と絡まっていますよね。そしたら、その人、あるいはその人に伝えた人たちの意見をのみ込んだ形で入って来る。それはあまり良くないと思うんです。あるニュースについてどう思うかっていうと、最初は百通りの考え方があるはずなんですが、それの中の大多数が思う意見っていうのがだんだんと真ん中で仕上がったような形になってしまう。
同世代のやつらと話しているのに、なんか六十代代表みたいなこと言ってるやつたまにいるじゃないですか。テレビ見ていて、むちゃくちゃしっかりした人の言葉で聞くと、すごい説得力があるから、それを聞いて理解しちゃった気になるんじゃないかと思うんですね。その言葉って日本の人口の中で一番分厚い部分の意見を代弁しているから、多数決やったらそっち勝つけど、その考え方をなんでオレら世代のやつが持たないかんのかって考えたら、あ、自分で考えてるんじゃないんやなんていうふうに思う時あります。
やっぱり、起きたことをまず自分で受け止めて、こう思うって考えた上で、じゃあ、なんで自分がこう思ったんやろうとさらに考える。自分の世代やら、所得やら、親の年齢やら、考えた背景にはいろいろ複合的な意味があるだろうし、逆に自分と別に環境、他の条件の人なら、違う考えを持つだろうなと分かってる。
だれもが人生、子どもから始まってるじゃないですか。最初子どもやったから、ルール作るとことか、決めるとことかに参加してへん時期があって、それでも世の中のことに無頓着でも、許されるというか、いいと思っちゃてるんですけど、それを一回認識し直さないとダメだと思うんですよね。世の中のルールとか意見が形成される作業に自分が加わっていかないと。そのためには、新聞読まんとダメですよね。 もともと新聞って日常風景の中にありますよね。朝起きてポストから取って、あるいは母親が取ったものが食卓の上にあって、ゴハン食べながら読むとか、生活の中に組み込まれやすい。それってけっこう胎児なんやないかと思っています。

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