介護現場 虐待生まぬために(上)

朝日新聞3月2日33面:介護の仕事で特に負担が重いとされるのが夜勤だ。2月下旬に東京都内の特別養護老人ホームを訪ねた。 夜勤の開始は午後4時45分。介護福士で15年目の男性主任は、すぐ夕飯の準備にとりかかった。「お金がない」と探し回る人や「どこに行くんだよー」と叫ぶ入所者に対し、主任は優しく声をかけて食堂に連れてい行く。 食事が終わると就寝に向けた介護が始まる。寝間着に着替えさせ、歯磨きを手伝い、オムツ交換や薬の手配…1人ずつ寝かせて、一段落したのは午後10時前だった。 夜勤は2時間の仮眠を含めて17時間。午後8時半から翌朝7時までは、職員2人だけで1フロア47人を担当する。 排泄の介助は、入所者が寝ている間も続く。オムツ交換は朝まで数時間おきに計4回。その間も職員を呼ぶコールの対応に追われる。 午前3時半、部屋で転倒したという男性からの呼び出しがあった。「救急車を呼んでもらえないか」担当の看護師に連絡し、緊急搬送することに。仮眠に入ったばかりのもう1人の男性職員を呼び戻し、手分けして病院や家族に電話を入れた。 電話連絡に追われる最中も入所者のSOSは響く。「助けてくれ!」という叫び声に駆けつけると、女性が床に座り込んで「なんでこんなんになっちゃったんだろう、分からん」と声をあげていた。午前4時半に緊急隊が到着し、主任が同行。残った職員が1人で応対することになった。明け方が近づくと、コール数は急増。トイレでは便の臭いがたちこめ、男性がうめき声をあげている。汚れを拭き取り、着替えさせる間もコールは鳴り続ける。「順番に回っていますから、お待ち頂けますか」そう繰り返しながら、職員はこう漏らした。「わかっているけど、どうしてもイライラしてしまう。先が見えない」 1時間後、主任が病院から戻ってきた。「こうした搬送は数ヵ月に1度くらいあります」その後、男性は頸椎骨折だったとの連絡が入った。 主任は「やりがいの多い仕事」と話す。一方で、『人の役に立ちたい』と思って仕事を始めたのに、これだけ時間に追われていると、人の役に立つところじゃないと感じる職員は多いとも明かす。 国は入所者3人に対して介護職員1人という配置基準を設けている。この基準でシフトを組むと人手が足りず、この施設でも夜勤は2人態勢にならざるを得ないという。この日、夜勤中の呼び出しコールは90回を超えた。 守られぬ労働時間上限
(略章)

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