人生の贈り物 立花隆(75) ⓺

朝日新聞4月11日夕刊4面:40年前の1976年2月にロッキード事件が発覚しました。全日空の大型旅客機導入を巡り、ロッキード社から政界などへ工作資金が流れた汚職事件。田中角栄元首相や丸紅、全日空の役員らが受託収賄、贈賄などの罪で起訴されました。
米上院の多国籍企業小委員会(チャーチ委員会)で、ロッキード社副会長のコーチャンらが証言し、「政界の黒幕」といわれた児玉誉士夫と丸紅がロ社の代理人となり、巨額の資金を日本の政府高官にバラまくという秘密工作が明らかになった。田中角栄の”刎頸の友”だった「政商」の小佐野賢治がロ社の工作に加担していた事実も証言にあった。小佐野の名前が出たことで、事件と田中とのかかわりを、多くの人が直感した。
チャーチ委員会の証言記録などの情報は、当時、朝日新聞のデスクで、後に「朝日ジャーナル」の編集長、ニュースキャスターを務めた筑紫哲也さんから得た。筑紫さんが副編集長当時の「朝日ジャーナル」に、僕は75年から田中角栄の金脈企業の裁判傍聴記を書き、親しくなっていた。筑紫さんからもたらされたチャーチ委員会の情報は、ロッキード事件に深入りするきっかけになった。以降、筑紫さんとは、しばし事件の情報交換をした。
ー事件を知って、驚かれたのでは?
日本の闇社会の帝王として伝説的な存在だった児玉誉士夫が、実は米国の代理人として使われていたことに驚いた。月刊「文芸春秋」などで、彼が政治家、財界人、官僚、マスコミといったオモテの世界だけでなく右翼、暴力団といったウラの世界に通じていること、造船疑獄などのスキャンダルやCIAとのかかわりなどを、チャート図入りで報じた。
ロッキード事件で、カネの流れは、ロ社から丸紅を通じ田中元首相に流れた「丸紅ルート」、全日空が旅客機導入のリベートをロ社に要求し政界にばらまいた「全日空ルート」、ロ社からの工作資金を児玉が小佐野賢治に流した「児玉ルート」の三つがあったが、その児玉ルートの相当な部分は分からないまま終わっている。児玉はいわば「ブラックの世界」、周囲も口がかたく、アメリカという国家が「やったことも歴史の闇に隠れたままであることを意味する。
ー田中元首相は派閥の総会で自身の疑惑を否定しましたが、76年7月に逮捕。その直前、立花さんは「週刊朝日」で「田名角栄への公開質問状」と題した記事で、遠からず事情聴取宇があるとして「(田中元首相は)疑惑をはらす唯一最大のチャンス」と述べました。
ロッキード事件は田中金脈の一環だとの推定はあった。逮捕で、「やっぱり」という感じがあったが、「政府高官」の最初の逮捕が、いきなり”トップ”だったことには驚いた。72年7月~74年12月の田中内閣の時期は事件の時期とすっぽりと重なる。田中政治と事件を中心に、田中角栄とその時代を歴史の中で検証しようと考え、「新・田名角栄研究」を月刊「文芸春秋」に発表した。政治と事件を広く横断的に考え、その意味と位置づけを歴史文脈の中で明らかにすることだった。(聞き手・平出義明)=全15回

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