ラジオと放送法 吉田照美さん

朝日新聞4月14日15面:ラジオの世界に入って43年目。元々、ラジオでくだらないことを追及してきた人間ですが、いまは、自分が言おうと思ったことを言わないと大変な世の中になっちゃうなという思いがあります。
変わったのは3・11がきっかけです。震災、特に原発事故被害の事態が政府発表時をもとにする報道だけではつかめなかった。「戦時中の情報統制みたいだ」と感じました。ならば、せっかくマイクの前にいるのだから、少しは自分の感じたこと、できることを伝えようと考えました。ツイッター情報も積極的に使った。吉田照美は反日だとか左傾化しているとか、批判されましたが、仕事を干されても仕方ないと覚悟を決めました。
以来、政治のありようについても自由にしゃべってます。例えば安倍政権の「1億総活躍」。1億人を総まとめにしているけど、「個」はそれぞれ違うってことを分かってないんじゃないですか。原発再稼働も安保法も、僕は反対です。黒塗りだらけのTPPの交渉文章開示なんてのも、どう考えてもおかしい。昔の輸入版「PLAYBOY」のヌード写真だって、黒塗りは肝心なとこだけだったのに!
確かに僕は偏っています。当然です。そもそも人はなみ偏っているものですから。偏り具合が違うだけです。すべての人が同じ考えだなんてありえないし、気持ち悪い。だから、リスナーが同じ考えになってくれないなんて全然思ってなくて、世の中の大体2割の人が共感してくれれば御の字です。残り8割についても、ご自身の意見とどこが違うか、僕の番組が考えるきっかけになればいい。
高市早苗総務相が放送法の規定をもとに、放送の内容によっては「電波停止もあり得る」と発言しましたが、僕はいろんな人がいろんな意見を好きに語る場を作りたいという気持ちでやっているし、それが結局、法方法のうたう「政治的公平」の実現につながるんだと思います。ただ、より影響力の大きいテレビでは、同じようにしゃべれないことは僕自身が分かっています。権力側の人もラジオには油断しているんじゃないかな。
僕の番組のレギュラーで詩人のアーサー・ビナードさんが以前、テレビについて「動かなくていい、そのままで君は幸せなんだというメッセージを送り続けている」と言いました。原発事故の報道で、その言葉の恐ろしい意味を実感しました。テレビを見る人は受け身になりがちだから、権力にとっては都合のいいように操作しやすいんじゃないかー。
僕が、こんなふうに考えるのは、おやじから聞いた戦争体験があるからです。少年兵として海軍に志願したおやじは戦時中、人間魚雷「回天」をつくる一人でした。人間を兵器の一部にするような非人間的なことを、なぜ日本の権力者はやったのか、できたのか。権力がつくった流れに、国民が乗っかったからでしょう。
そんな歴史を二度と繰り返さないため、メディアに関わる一人としてできることをする。そう腹を決めて、自分の考えを自由に番組で語っているわけです。
ラジオの最大の持ち味は個人に対して強く働きかけることができる点です。権力に都合のいい流れをつくらないためには、やっぱり一人ひとりが考えなければなりません。世の中にあふれる情報の中から自分に必要な情報を感知するアンテナを磨くのも個人です。そのお役に少しでも立てればと思いながら、毎日、マイクに向かっているところはありますね。
僕の番組に4月から、時事ネタのコント集団「ザ・ニュースペーパー」のコーナーをつくったんです。安倍晋三さん、石破茂さんの物まねをはじめ、政治コントをやってもらっています。笑いもラジオの武器ですが、どうも最近は笑いが窮屈ですからね。最近の政治を、どうぞ思い切り笑ってください。(聞き手・永持裕紀)

2016/ 4/14 15:26

2016/ 4/14 15:26

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