ユニフォームで共有した東京マラソン 日野原 重明

朝日新聞4月2日be9面:2年前、私は聖路加国際病院で循環器内科の新沼廣幸先生の診察を受け、心臓の大動脈弁に狭窄(きょうさく)が発見されました。米サンフランシスコの病院で内科循環器科の医長を務める三男に電話で相談したところ、100歳超での手術には危険も伴う、受けない方がよいとの意見でした。 忠告通り手術を断念し、経過を観察していましたが、昨年はサッカーの試合をテレビで観戦していた際、心房細動が起きました。それでも焦らず、心臓の電気ショック療法を受け、治療が奏功して体調も良くなりました。その後も、主治医の新沼先生が私の大動脈弁の狭窄が進行しないように指導してくれるお陰で、私は安心して日常の業務をこなしています。
その現在51歳の新沼先生が、去る2月28日に行われた「東京マラソン2016」で、幸運にも抽選にあたり、出場資格を得ることができました。しかも当日、新沼先生は背中、胸、左腕に本欄の小田桐昭画伯描く私のマラソン姿をあしらい「あるがまま行く、日野原重明」と書いた半袖シャツのユニフォームを身に着けて出場し、見事に完走されてのです。タイムは5時間28分とのことでした。つまり、5時間半も沿道の人たちが「あるがまま行く私」を目にしてくれたのです。
当日は、私が理事長を務めるライフ・プランニング・センターのボランティアの女性たちが声援を送りました。新沼先生は完走できる自信がなかったそうですが、女性陣の応援に応えようと気合を入れ、フルコースを走りぬいたのです。自宅で健闘を願っていた私の元に、新沼先生の完走の知らせが届きました。私自身は走ることができなくても、走る私が描かれたユニフォームという「心のたすき」をもらったことで、私は東京マラソンの感動を共有することができたのでした。
このエッセーを書く間に、「そうだ、明日のライフ・プランニング・センターのクリニックでの検診に、このユニフォームを着ていこう」と思いつきました。皆さんのびっくりしたお顔を想像すると、ますます楽しみです。今年の抱負でもある「もっと高く飛び上がりたい」という私の気持ちを、東京マラソンをめぐる出来事が後押ししてくれたようです。(聖路加国際病院名誉院長)

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