9月9日 小さないのち みんなで守る【2】

朝日新聞2017年9月5日35面:ネット縁組 高収入優先「家庭の調査不十分」指摘も ネットを通じて特別養子縁組を仲介するサイト「インターネット赤ちゃんポスト」は、大阪市のNPO法人・全国おやこ福祉支援センターが運営する。実際の縁組を仲介するのは、坂口源太・代表理事(40)と4人のパートスタッフ。2014年の発足以来、35件の縁組が成立した。
子どもが欲しい夫婦は登録時に職業、年収など77項目を入力する。毎月3千円の利用料で、赤ちゃんの詳しい情報を見ることができる。通常、赤ちゃん1人に50組前後の申し込みがあり、ポイント制で候補を決める。職業では医師、会社員などが細かく点数化され、高収入で安定した職業ほど高くなるほか、専業主婦も高得点になる。子どもを迎えるための自前の研修はなく、行政が行う研修を受けると加点される。高得点の夫婦ほど養育環境が良いと見なされ、優先順位が上がる。8月上旬現在、239組の夫婦が登録する。
同団体では、通常の出産にかかる費用のほかに、妊娠中の女性の生活費も養親側に負担させることが多く、1件の縁組で支払う平均額は200万円弱とほかの団体に比べて高めになると説明する。坂口氏は「実母に安心して産んでもらうために必要で、自分の利益のためにやっていることではない」と話す。
同団体は、サイト「産んでくれたら最大200万円相当の援助」などとうたう。大阪市は「(人身売買との)誤解が生じかねない」と、分言を削除するよう計9回、行政指導した。関西大客員教授で全国里親会の副会長も務める津崎哲郎さんは「便利な仕組みかもしれないが、育てる家庭の調査や研修が不十分では、子どもが途中で投げ出される心配がある。スピード重視の安易な縁組では子どもの幸せな育ちを守れない」と指摘する。
「親」になる覚悟問う研修 特別養子縁組を仲介する民間事業者の中には、縁組を希望する人たちに、養親になるための研修などをしている事業者が多い。中部地方に住む40代の自営業夫婦は10年近く続けた不妊治療が実らず、2年前、関東の縁組仲介の民間団体に登録。団体主催の講座を受け、縁組を希望する理由をつづった手紙も出した。面接は4時間にも及び、子どもに障害があっても受け入れること、愛着関係を結びにくい状況になっても育てる意思があることなどを繰り返し確認された。「自分たちの覚悟を見つめ直す時間になった」と妻は話す。
今年1月、「決まった」と連絡があり、出産予定日に合わせて病院へ。待機していると、生まれた女の赤ちゃんを助産師が連れてきてくれた。退院までの1週間、ほとんどの時間を赤ちゃんと過ごした。実母の名前から1文字もらって名付けた。同居後6ヵ月以上の試験養育期間を経て、家庭裁判所の審判が出れば、縁組が成立する予定だ。新しい命を迎えて半年余り。「いないないばあ」をすると喜び、いつも目で追ってくれる。血がつながっていなくても家族だと感じている。
(山田佳奈)


特別養子縁組=は、民間事業者や児童相談所が仲介する。ただ、それぞれの取り組みにはばらつきがある。予期せぬ妊娠などで生まれた赤ちゃんがどこに託されるか、子どもが欲しい夫婦がどこに相談して支援を受けるかで、将来の養育環境に差が出かねない状況だ。縁組仲介を手がける民間事業者は23(16年10月)。この10年でほぼ倍増した。民間事業者による縁組の成立件数(15年度)も186件で、5年前の3倍近い。
朝日新聞の取材では、赤ちゃんの健診に同行したり、育ての親を交流させたりて手厚い支援をする事業者もあれば、赤ちゃんの引き渡し後はとくに関知しなくなるところもあった。営利目的の事業者も現れた。千葉県内の事業者(16年9月に解散)はネットの縁組サイトを運営。縁組希望者から営利目的で225万円を受け取ったとして児童福祉法違反の罪に問われ、元理事(36)らは有罪判決を受けた。児童福祉の経験が皆無で、4件の仲介はすべて失敗していた。
厚生労働省研究班の調査によると、英国やドイツなどでは養子縁組は法律に基づき、どの機関で縁組してもほぼ共通の研修や支援が受けられるという。日本には現在、統一基準がない。国は来春、事業者をいまの届け出制から自治体による許可制に変える予定で、事業者の「質」のばらつきの是正を図る。営利目的の縁組への監視を強めるとともに、縁組後の継続的な支援や研修の充実などを検討する。
一方、行政機関である児童相談所が仲介した縁組件数にも、地域によってばらつきがある。朝日新聞は、児童相談所を設置する全国69自治体に、14~16年度の特別養子縁組についてアンケート。都道府県では大阪府が74件と最多で、愛知県69件、東京都67件と続いた。最少は宮崎県の2件。岐阜県25件、鹿児島県24件など、大都市圏以外で20件を超えたところもあった。
人口規模が150万人前後の政令都市でみても、神戸市18件、福岡市16件に対し、京都市6件、川崎市3件と差が出た。縁組に積極的に取り組む自治体がある一方、仲介経験が不足していたり、人手不足だったりして縁組業務の優先順位が低くなる自治体もあるとみられる。官と民それぞれが課題を抱える中で、連携して縁組に取り組む動きも出てきた。長年、縁組件数がゼロだった神奈川県横須賀市の児相は15年度、民間事業者「ベアホープ」(東京都)と連携。実母を児相、養親を民間が支援するなど役割を分担して取り組んだところ、15年度以降、5件成立した。(山本奈朱香、赤亦邦夫)

朝日新聞ASAの伸光堂西部販売 森林文化協会

ご予約・お問い合わせはお気軽に

Tel0120-740-276

〒352-0011 埼玉県新座市野火止8-14-29

ページトップへ戻る