9月8日 未利用魚 浜の看板

日本経済新聞2018年9月1日夕刊1面:漁港の食堂行列/すし・カレー・・用途多彩「やっかいもの」から出世 小さかったり知名度が低かったりで浜の「やっかいもの」扱いされてきた雑魚「未利用魚」が脚光を浴びている。大型スーパーに並びにくいが故に消費者には個性的に映る。すしやカレーなどの新商品が続々登場。漁港直結の食堂もにぎわう。世界的な需要増で多くの水産資源が減少傾向なのか、海の恵みの有効活用や漁業収入の底上げに期待が高まっている。アイゴにウメイロ、ウツボ。東京都墨田区の宅配ずし「京山」の一番人気は「おまかせセット」(1人前1580円)。どんな魚が入っているのかは「その日のお楽しみ」(朝山議尊店長)だ。全国の漁師から季節限定や地域独特の魚を直送してもらう。小さかったり毒針があったり手間はかかるが客の反応は上々だ。
余すことなく 朝山店長は浜を巡り、規格外やマイナーという理由で魚が捨てられたり安く売りたたかれたりしている現状に胸を痛めた。「日本には各地においしい魚がある」。これまですしにした魚は500種以上。評判を聞いた漁師から「ウチの魚も扱って」と連絡も相次ぐ。「とれたてのシラス丼と煮付けですよ」。茨城県大洗港にある食堂「かあちゃんの店」は行列が絶えない。店員は全員、漁師の妻。地魚を漁師飯にして出す。一番人気はかき揚げとお刺し身のセット「かあちゃん御前」(1300円)。名前は有名でも数量がそろわず、規格より小さいため出荷できないアジやイカも、煮物や南蛮漬けにし無駄なく使いきる。
魚の仕入れにはルールがある。その日のセリの最高値より最低1割高く買う。数や形がそろわない魚も買う。不安定な漁獲、燃油など経費の上昇が漁師の経営を圧迫する。どんな魚も「少しでも高値がついてほしい。おいしい魚をたくさんの人に味わってほしい」(大洗町業業協同組合女性部の川上英悦部長)からだ。漁師飯は名物となり年間売上高は1億4千万円、来客数は10万人を超す。魚価の底上げはもちろん「観光客も店も増え浜が活気づいた」(同漁協の臼庭明伸参事)。
驚きが消費刺激 今、なぜ未利用魚か。鹿児島大学の佐野雅昭教授は「彩や意外性、驚きが消費を刺激する」と指摘する。日本周辺には4千種以上の魚類がいるが、日常的に食べるのは数十種類。季節や地域性に富んだ町の魚屋が減り、大型量販店では定番の魚種に絞り込みが進んだ。売り場が同質化し、価格競争に限界もみえるなか「話題性と地域性、季節性もアピールできる」(佐野教授)。消費者の国産志向は根強い。魚の鮮度に加え、地元でとれた安心感も魅力の一つだ。回転ずし大手「くら寿司」は17年11月から、大手では珍しいシイラやボラといった国産天然魚のすしを全国で発売した。沖縄県今帰仁村の北山商店は、地元のソデイカと島唐辛子を使ったレトルトカレー「沖縄のスパイシーなカレー」を今春発売。地元の人にも観光客も人気だ。
国内最多の漁獲量を誇る北海道。水温上昇などでとれる魚も変わってきた。主要なホタテやサケなどに加え、「今まであまりとれず使わなかったブリなどの活用にも注力する」(北海道漁業協同組合連合会の安田昌樹代表理事常務)。道の漁獲量がピーク時の3分の1に減り、昨年過去最低を更新した厳しい現状も背景にある。地元の魚に親しんでほしいと学校給食に取り入れる自治体も増えている。今は国内総漁獲量の「1~3割が未利用魚」(漁業団体)だが、工夫次第で浜の収益源へと出世している。(佐々木たくみ)
諒価値に脚光 「未利用魚は宝の山」と語るのはサバ専門店「SABAR」を展開する鯖や(大阪府豊中市)の右田孝宣社長だ。8月に、島根県の隠岐諸島に養殖池を新設し、サバの稚魚1800匹を放流した。エサは島でとれても捨てていた小さなトビウオ、イワシなどを使う。養殖費用の7割を占めるエサ代を軽減できるほか、やはり大事な命を捨てるのは「もったいない」。日本は海に開かれ、昔からとれた魚を上手に利用してきた。余った雑魚も丼や汁物、練り物などに使い、各浜でご当地料理が生まれてきた。近年、日本近海の水産資源は減少傾向にある。国際的な漁業規制も強まるなか、大幅な漁獲増を期待するのは難しいかもしれない。未利用魚は「食料自給率アップや地方創生のカギともなる」(自民党水産部会長の江島潔参院議員)。雑魚の可能性は大きい。

朝日新聞ASAの伸光堂西部販売 森林文化協会

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