9月6日 平成とは 天安門事件「6」

朝日新聞2018年8月31夕刊14面:「彼の件」で突然の聴取 「血の弾圧」からひと月足らずの、1989年6月30日夕刻、北京の自宅の電話が鳴った。男性が英語で私の所在を尋ねたので、妻が「仕事で不在です」と答えた。しばらくして帰宅すると、電話があった。「北京市国家安全局だが、あなたに聞きたいことがる。明日来てもらいたい」。相手は用件を言わずに電話を切った。翌7月1日午前9時半。私を待っていたのは、北京市国家安全局の2人の男性だった。国務院(中央政府)には、公安省とは別に国家安全省があり、各地方政府には国家安全局がある。外国の記者も含め、スパイ活動の監視などを行う情報機関だ。私は上着の内ポケットに小型のテープレコーダーを忍ばせて、事情聴取に臨んだ。彼らは、ある学生運動家について聞いてきた。やり取りを再現してみよう。
「彼は審査を受けている。彼の供述では、関係資料をあなたに預けたという。彼のことをすっかり話してもらいたい」「我々新聞記者には『一つの原則』がある。取材した人の秘密を守るということだ。あなた方に『四つの原則』があるなら、私に『一つの原則』がある。私はこの原則を断固して守る」
私の答えもかなりの屁理屈だが、注釈を加えると、「四つの基本原則』とは、1979年に最高実力者の鄧小平が提起した社会主義政治体制の原則で、①社会主義の道 ②人民民主独裁 ③共産党の指導 ④マルクス・レーニン主義と毛沢東思想のことだ。 私の反論にはお構いなしに、相手は畳みかけてきた。「あなたは中国にいるのだから、中国の事情に基づいて話してもらいたい」「私は自分の良心と原則を犯したくない。何も話すことはない」「今日は、あなたが彼のことを証言して資料を出す。それで終わるはずだった。だが、あなたがそうしないのなら、我々は法律によって対応する。それでもいいか」 (元北京支局員・田村宏嗣)

 

 

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